研究課題
ソーシャルスキル教育および感情教育に関する研究:規模および推進力において優れているアメリカ国内の予防教育が行政や社会の時勢においてどのような影響を受けてきたか、その背景を調べ現在の状況や広く流布しているプログラムを整理した(「世界の予防教育(仮題)」(金子書房)で刊行予定)。成果はアメリカ学校心理学会(NASP)およびアメリカ人格社会心理学会(SPSP)で発表した。予防教育の研修:世界的にポピュラーな予防教育の研修に実施したり、中心人物と情報交換した。(1)Positive Behavior Interventions and Supports(PBIS):5月に開催されたオレゴン大学のDr.Horner先生の研修会に参加し、PBISのプログラムやデータの活動経過などの説明を受け、フレズノにある小学校を視察した。(2)Social and Emotional Learning:7月にマンチェスター大学での学会に参加し、予防教育についてのシンポジウムを実施した。社会性の育成だけでなく、感情教育に焦点を当てるプログラムを展開することで、これまで社会性の形成とあまりリンクして考えてこなかった学業達成に大きな効果があることを学ぶことができた。実践教への参加:アメリカの小学校で展開されているPower of Playプログラムに参加した。このプログラムは、向社会的な仲間関係を促進し、問題解決のスキルを育成することを目標としているが、ITや大学生を有効活用した構造的な実践を学んだ。 アセスメントツールの日本版作成への着手:10月にノースキャロライナの3-C Social Developmentを訪問し、プレジデントであるDeRosier先生にお会いし、アセスメントとして開発されているオンラインアセスメントツールの日本版を作成し、共同研究をすることの同意を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
ソーシャルスキル教育および感情教育に関する研究:成果はアメリカ学校心理学会(NASP)およびアメリカ人格社会心理学会(SPSP)で発表したが、検討できていない問題もまだ残されている。明らかになった感情の発達の状況をふまえながら、どのような教育的な働きかけをしていくことが望ましいかをまとめる必要がある。その際、世界的にポピュラーな予防教育の2つである、Positive Behavior Interventions and Supports(PBIS)や、Social and Emotional Learningを基本に、日本でも導入できる教育内容とシステムを独自に考えていくことが必要である。具体的には、まず、こうしたソーシャルスキル教育が、社会性や感情の発達を促し、育成するだけではなく学業達成にも大きな影響を及ぼしていることを実証的に国内の学校にも伝えていく必要を感じた。つぎに、実際の教員研修システムを構造化し、連携のとれる形をつくってから、セッションを開始する等のタイムラインのもちかたが重要であることが明らかとなった。実際に、中学校を対象にしたSSTの実践からは、教師の声かけなどの般化・維持の認知やSSTへのビリーフが子どもたちのコミュニケーションに影響を与えていることが明らかになった・さらには、学生やITを駆使する可能性を学ぶことができた。特に、教員による評価や子どもたちのソーシャルスキルおよび感情のリテラシーを迅速かつ多くの情報を得ることを可能にするオンラインアセスメントツールの日本版の作成は、今後の研究のあり方について、かなりの成果を得ることが期待できる。
今年度は、ソーシャルスキル教育のアセスメントツール(Zoo-U)の日本版の完成を8月に予定している。現在、ノースキャロライナのDeRosier博士とアセスメントツールの翻訳と音声の録音を共同して進めており、さらに、静岡県、千葉県、東京都などでそのツールを用いた大規模な実施を8,9月に考えている。これはRTIモデルによれば、Tier1(Universal)のレベルに基づいており、プログラムは使いやすく経過を測ることができ、子どもたちのソーシャルスキル教育の動機づけを高めることにもかなり貢献している。これによりデータを獲得し、使用状況やツールの信頼性および妥当性、さらには、フィードバックのあり方が軌道にのれば、さらに発展的な研究が期待できる。また、感情リテラシーの研究成果を7月のモトリーオールでの国際学校心理学会で発表し、英文雑誌に投稿したいと考えている。8月にはアメリカでのアメリカ学校心理学会での情報交換の場に参加予定である。教員研修については、9,10月において導入のあり方を工夫し、実際にソーシャルスキル教育を開始したいと考えている。また、年度内に10月には国内で開催される予防教育研究会や8月、2013年の3月でのアメリカでのPBISの研修会にも参加し、情報交換および国内をこえての連携体制を構築することを予定している。来年度の夏には、法政大学での大きな研修及び予防教育構築の集大成になる学会を開催予定である。
次年度へ繰り越す研究費が生じたのは、契約や学校との連携が必ずしも3月の学歴に年度末に終了するものではないことや、使用のタイミングが次年度に持ち越すことが生じたためである。また、重要な成果発表の機会が次年度にあると判断したことにもよる。また、アセスメントツールが完成した後、各学校での実施を予定していることから、国内を移動する旅費やツールを実施することに伴う研究補助の研修会議費が次年度に必要である。静岡県、千葉県で数校を対象に実施、データを得ることから研究補助やデータ分析を手伝ってくれる学生や大学院生の旅費や謝金が必要である。途中成果の発表としては、7月のカナダでの学会や2月、3月のアメリカでの研究打ち合わせおよび研修会への参加を計画している。同時に、論文を投稿することも予定していることから英文校閲費なども予定している。
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カウンセリング研究
巻: 44 ページ: 81-91
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