研究課題
ソーシャルスキル教育および感情教育に関する研究:アメリカやカナダを中心とした地域では、ソーシャルスキル教育における感情リテラシーの育成については、学校予防教育の位置づけで取り組まれていることが明らかとなった。こうした取り組みについては、各国とも国の行政プランの影響を強く受けつつも、すばらしいプログラム(エビデンスが明らかであり、普及力をもつ枠組みや考え方)については積極的に取り入れられ国からのサポートを受けている様子が浮き彫りとなった。この点に関しては、金子書房の世界の学校予防教育にまとめられすでに刊行された。これを受け、ソーシャルスキル教育を学校予防教育の一つとして位置づけるとともに、教員研修のあり方もこのプログラム一つだけではなく、いじめ、自然災害などのすべての学校危機に関する予防を可能にする教員研修システムを考えて行くべきであると考えつつある。さらに、ソーシャルスキル教育の感情リテラシー強化を可能にするフレームワークとしては、Social and Emotional Learningの考えをベースにプログラムのひな形を完成し、学校で実施し効果をみるという地道な実践を重ねる必要があると考えすでにモントリオールで開催された世界学校心理士学会で口頭発表をした。効果測定としては、新しいオンラインツールの日本版(Zoo-U-Japan)を導入し、共同研究を実施し興味深いデータを得た。その成果が英文のニューズレターで発表されている。こうした背景から、教員研修システムの構築には学校予防教育全体の基礎研修を想定し、学校の状況に応じたプログラムを選択できる力やアセスメント力を教師に養う事がまず大事ではないかと考えている。その参考に、Positive Behavior Interventionの研修を望ましいと考えておりすでに連携をとり関係性を強めている状況である。
2: おおむね順調に進展している
教師のプログラム実施やアセスメント能力の向上を意図した支援方法の明確化が目標であった.まず、アセスメントの簡便化と主観的な評価に頼る質問紙ではなく、オンラインツールの日本語版を開発したこともあって教師の実施への抵抗と負担感の解消の可能性と子供たちのソーシャルスキルの測定の可能性が示された、実際にアメリカと日本の比較を実施し、興味深い結果を得ていることから、世界学校心理士学会で発表予定である(アメリカの3-C Institution のDeRosierと共同)。ただし、国による差が出ていることから、使用にあたって比較文化的な考察が必要である。また、従来の教師と生徒の評価のギャップやクラス差などを考えて、DVDなどを用いた各スキルのモデル提示と、スキルに必要なポイントをの明示など、教材の開発を進めて行く必要がある。つぎに、感情リテラシーの育成カリキュラムを導入する目的については、感情リテラシーの基礎的な研究を実施し、その成果をモントリオールで開催された世界学校心理士学会で発表し、反響を得た。感情リテラシーの発達において、入り交じった感情の認知や、感情の種類の弁別などが、対人関係への応用にも影響することが明らかとなった。さらに、性差が大きい事が明確になり、なぜ性差が生じるのかという根本的な理由を明らかにすることができれば、より実態をふまえた教材作りやカリキュラム作成が可能になると考えられる。現実には、幼児から小学校中学年を対象にした感情教育のワークブック的な書籍を出版し、現場に導入しつつある。今後カリキュラムを明確にしていく必要があることや、個々のスキルの発達の基礎研究が十分でないため、各ターゲットスキルの獲得過程やポイントをおさえていく予定である。現在試みに「聞くスキル」にしぼった基礎研究とこれいついてDVDを用いた教員養成を新たに開始している。
以前の目標であった、ソーシャルスキル教育のアセスメントツール(Zoo-U-Japan)の日本版は完成され、すでにアメリカと日本の子供たち各国200名上を対象に分析を行った。その結果、日本の子供たちが仲間に働きかけるスキルが低く、アメリカの子供たちは、協力性が日本の子供たちよりも劣っている事が明らかとなった。いずれも同じソーシャルスキル教育を実施しながらも、こうした国による違いがでる可能性を探ることができれば、教育方法の改善やインターナショナルな気づきを得たプログラムの構築が可能になると考えられる。ただし、いまだ、プログラムの細部の部分や使用方法について改善して行く必要がある。ここまでの成果は、7月にポルトガルで開催される、世界学校心理士会で口頭発表する予定である。つぎに、感情リテラシーの強化についてのプログラムは、これまでに出したソーシャルスキルの書籍の改訂を行いその点についての資料を加えた。また、世界の学校予防教育という書籍を刊行し、その中で感情リテラシーが強化されつつある現状を説明した。実際に、基礎的な研究を実施した成果を、論文に投稿する予定でいる。また、感情理解などの面についてもさらに基礎研究を進め、ベースとなる理論構築を地道に続けて行きたい。最後に、教員養成のあり方においては、DVDによる教員のソーシャルスキルや予防教育のイメージの獲得につながる材料の開発や、近年教員自身の「学校環境の認知」が学校への働きかけの積極性に影響を与えているという示唆が多い事からこの点についての研究を進めて行きたい。また、セッション後の般化や維持についてのタイムラインについてもさらに具体的な案を提案していきたい。夏にはこうした方面での研究者をアメリカ、ヨーロッパから招待していることから研究の交流を進めグローバルな研究に進めていくつもりである。また、最終年度であるため成果を発表し、まとめる。
今年度は、昨年度開発したオンライン型のアセスメントツールを用いて日本とアメリカの子どもたちを比較した結果、日本の子どもたちが仲間との協力行動が多いのに対して、自分からの働きかけが少ない結果が認められた事から7月の世界学校心理学会(ポルトガル)で発表する。すでに、学会発表は採択の知らせを受けており準備をすすめている。発表会場では、教員研修システムについての打ち合わせを行う予定である。 そのため、渡航費と宿泊費などを使用する予定。また、感情のリテラシーの発達についてはすでに学会で発表したが、それを論文として投稿する予定であり英文校閲を利用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (6件) 備考 (1件)
子どもと発達発育
巻: 10巻4号 ページ: 198-202
神奈川県学校保健連合会
巻: なし ページ: 2-3
児童心理
巻: 8月号 ページ: 1-10.
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