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2012 年度 実施状況報告書

ソーシャルスキル教育における感情リテラシー育成の強化と教員研修システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 23530870
研究機関法政大学

研究代表者

渡邊 弥生  法政大学, 文学部, 教授 (00210956)

研究分担者 小林 朋子  静岡大学, 教育学部, 准教授 (90337733)
キーワードソーシャルスキル(アメリカ) / 学校予防教育(アメリカ、オランダ) / コミュニケ-ション
研究概要

ソーシャルスキル教育および感情教育に関する研究:アメリカやカナダを中心とした地域では、ソーシャルスキル教育における感情リテラシーの育成については、学校予防教育の位置づけで取り組まれていることが明らかとなった。こうした取り組みについては、各国とも国の行政プランの影響を強く受けつつも、すばらしいプログラム(エビデンスが明らかであり、普及力をもつ枠組みや考え方)については積極的に取り入れられ国からのサポートを受けている様子が浮き彫りとなった。この点に関しては、金子書房の世界の学校予防教育にまとめられすでに刊行された。これを受け、ソーシャルスキル教育を学校予防教育の一つとして位置づけるとともに、教員研修のあり方もこのプログラム一つだけではなく、いじめ、自然災害などのすべての学校危機に関する予防を可能にする教員研修システムを考えて行くべきであると考えつつある。さらに、ソーシャルスキル教育の感情リテラシー強化を可能にするフレームワークとしては、Social and Emotional Learningの考えをベースにプログラムのひな形を完成し、学校で実施し効果をみるという地道な実践を重ねる必要があると考えすでにモントリオールで開催された世界学校心理士学会で口頭発表をした。効果測定としては、新しいオンラインツールの日本版(Zoo-U-Japan)を導入し、共同研究を実施し興味深いデータを得た。その成果が英文のニューズレターで発表されている。こうした背景から、教員研修システムの構築には学校予防教育全体の基礎研修を想定し、学校の状況に応じたプログラムを選択できる力やアセスメント力を教師に養う事がまず大事ではないかと考えている。その参考に、Positive Behavior Interventionの研修を望ましいと考えておりすでに連携をとり関係性を強めている状況である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

教師のプログラム実施やアセスメント能力の向上を意図した支援方法の明確化が目標であった.まず、アセスメントの簡便化と主観的な評価に頼る質問紙ではなく、オンラインツールの日本語版を開発したこともあって教師の実施への抵抗と負担感の解消の可能性と子供たちのソーシャルスキルの測定の可能性が示された、実際にアメリカと日本の比較を実施し、興味深い結果を得ていることから、世界学校心理士学会で発表予定である(アメリカの3-C Institution のDeRosierと共同)。ただし、国による差が出ていることから、使用にあたって比較文化的な考察が必要である。また、従来の教師と生徒の評価のギャップやクラス差などを考えて、DVDなどを用いた各スキルのモデル提示と、スキルに必要なポイントをの明示など、教材の開発を進めて行く必要がある。つぎに、感情リテラシーの育成カリキュラムを導入する目的については、感情リテラシーの基礎的な研究を実施し、その成果をモントリオールで開催された世界学校心理士学会で発表し、反響を得た。感情リテラシーの発達において、入り交じった感情の認知や、感情の種類の弁別などが、対人関係への応用にも影響することが明らかとなった。さらに、性差が大きい事が明確になり、なぜ性差が生じるのかという根本的な理由を明らかにすることができれば、より実態をふまえた教材作りやカリキュラム作成が可能になると考えられる。現実には、幼児から小学校中学年を対象にした感情教育のワークブック的な書籍を出版し、現場に導入しつつある。今後カリキュラムを明確にしていく必要があることや、個々のスキルの発達の基礎研究が十分でないため、各ターゲットスキルの獲得過程やポイントをおさえていく予定である。現在試みに「聞くスキル」にしぼった基礎研究とこれいついてDVDを用いた教員養成を新たに開始している。

今後の研究の推進方策

以前の目標であった、ソーシャルスキル教育のアセスメントツール(Zoo-U-Japan)の日本版は完成され、すでにアメリカと日本の子供たち各国200名上を対象に分析を行った。その結果、日本の子供たちが仲間に働きかけるスキルが低く、アメリカの子供たちは、協力性が日本の子供たちよりも劣っている事が明らかとなった。いずれも同じソーシャルスキル教育を実施しながらも、こうした国による違いがでる可能性を探ることができれば、教育方法の改善やインターナショナルな気づきを得たプログラムの構築が可能になると考えられる。ただし、いまだ、プログラムの細部の部分や使用方法について改善して行く必要がある。ここまでの成果は、7月にポルトガルで開催される、世界学校心理士会で口頭発表する予定である。つぎに、感情リテラシーの強化についてのプログラムは、これまでに出したソーシャルスキルの書籍の改訂を行いその点についての資料を加えた。また、世界の学校予防教育という書籍を刊行し、その中で感情リテラシーが強化されつつある現状を説明した。実際に、基礎的な研究を実施した成果を、論文に投稿する予定でいる。また、感情理解などの面についてもさらに基礎研究を進め、ベースとなる理論構築を地道に続けて行きたい。最後に、教員養成のあり方においては、DVDによる教員のソーシャルスキルや予防教育のイメージの獲得につながる材料の開発や、近年教員自身の「学校環境の認知」が学校への働きかけの積極性に影響を与えているという示唆が多い事からこの点についての研究を進めて行きたい。また、セッション後の般化や維持についてのタイムラインについてもさらに具体的な案を提案していきたい。夏にはこうした方面での研究者をアメリカ、ヨーロッパから招待していることから研究の交流を進めグローバルな研究に進めていくつもりである。また、最終年度であるため成果を発表し、まとめる。

次年度の研究費の使用計画

今年度は、昨年度開発したオンライン型のアセスメントツールを用いて日本とアメリカの子どもたちを比較した結果、日本の子どもたちが仲間との協力行動が多いのに対して、自分からの働きかけが少ない結果が認められた事から7月の世界学校心理学会(ポルトガル)で発表する。すでに、学会発表は採択の知らせを受けており準備をすすめている。発表会場では、教員研修システムについての打ち合わせを行う予定である。 そのため、渡航費と宿泊費などを使用する予定。また、感情のリテラシーの発達についてはすでに学会で発表したが、それを論文として投稿する予定であり英文校閲を利用する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 社会性を育む親子関係2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生
    • 雑誌名

      子どもと発達発育

      巻: 10巻4号 ページ: 198-202

    • 査読あり
  • [雑誌論文] いじめの対応に追われる事、予防していくこと。あなたはどちらを選びますか。2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生
    • 雑誌名

      神奈川県学校保健連合会

      巻: なし ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 小学校三年生・四年生ってどんな時期2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生
    • 雑誌名

      児童心理

      巻: 8月号 ページ: 1-10.

  • [学会発表] 世界の学校予防教育2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生、山崎勝之、内田香奈子、戸田有一、松本有貴、佐々木恵、小泉令三
    • 学会等名
      日本教育心理学会第54回総会
    • 発表場所
      琉球大学、沖縄県
    • 年月日
      20121124-20121126
  • [学会発表] 青年期の親密関係における愛とコミュニケーションの異文化考察2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生 & Gouveia,A.
    • 学会等名
      日本心理学会第76回大会
    • 発表場所
      専修大学、東京都
    • 年月日
      20120911-20120913
  • [学会発表] Development of emotional literacy and social skills acquisition2012

    • 著者名/発表者名
      Jimerson,S.R.,Brown,J,Shahroozi,R.,Brown,O. & Watanabe,Y.
    • 学会等名
      34th Annual Conference International School Psychology
    • 発表場所
      Montreal,Canada
    • 年月日
      20120710-20120713
  • [学会発表] International PREPaRE:2012

    • 著者名/発表者名
      Jimerson,S.Brown,J.,Shahroozi,R.,Brown,O.,& Watanabe,Y.
    • 学会等名
      34th Annual Conference International School Psychology
    • 発表場所
      Montreal, Canada,
    • 年月日
      20120710-20120713
  • [学会発表] Natural disasters:2012

    • 著者名/発表者名
      Jimerson,S. Brown,J,Saeki,E. & Watanabe,Y.
    • 学会等名
      Annual convention of the National Association of School Psychologists.
    • 発表場所
      Philadelphia,U.S.
    • 年月日
      20120212-20120215
  • [学会発表] Responding to the 2011 Tohoku Japan Earthquake2012

    • 著者名/発表者名
      Jimerson,S,Ishikuma,T.Ozawa,M,Watanabe,Y.,Nishiyama,H.Ikeda,M.,Pfohl,B.,Reeves,M,Cowan,K,& Brock,S
    • 学会等名
      Annual Convention of the National Association of School Psychologists.
    • 発表場所
      Philadelphia,U.S.
    • 年月日
      20120212-20120215
    • 招待講演
  • [学会発表] Cross national insights regarding emotional literacy and social skills acquisition.2012

    • 著者名/発表者名
      Waranabe,Y.Jimerson,S.R.,Saeki,E.& Kido,M.
    • 学会等名
      Annual Convention of the National Association of School Psychologists.
    • 発表場所
      Philadelphia,U.S.
    • 年月日
      20120212-20120215
  • [図書] 看護系学生のための日本語表現トレーニング2013

    • 著者名/発表者名
      野呂幾久子、渡辺弥生、味木由佳
    • 総ページ数
      40-50, 55-58(全69頁)
    • 出版者
      三省堂
  • [図書] 金子書房2013

    • 著者名/発表者名
      山崎勝之・戸田有一・渡辺弥生
    • 総ページ数
      448
    • 出版者
      世界の学校予防教育
  • [図書] 発達心理学と隣接領域の理論・方法論2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生
    • 総ページ数
      12
    • 出版者
      新曜社
  • [図書] 保育系学生のための日本語表現トレーニング2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生平山祐一郎、藤枝静暁
    • 総ページ数
      104
    • 出版者
      三省堂
  • [図書] 人前での叱り方・言い聞かせ方2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺弥生
    • 総ページ数
      192
    • 出版者
      PHP出版株式会社
  • [図書] Best Practices in School Crisis Prevention and Intervention2012

    • 著者名/発表者名
      Jimerson,S.,Brown,J.A.,Saeki,E.,Watanabe,Y. Kobayashi,& Hatzchristou,C.
    • 総ページ数
      758
    • 出版者
      National Association of School Psychologists
  • [備考] 法政大学文学部心理学科渡辺弥生研究室

    • URL

      https://sites.google.com/site/emywata/

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公開日: 2014-07-24  

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