研究課題/領域番号 |
23530871
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
椎名 乾平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60187317)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 評定尺度 / 意思決定 |
研究概要 |
研究の目的 評定尺度法は心理学の基本的ツールであるが,その性質はよくわかっていない.本研究では新しい研究パラダイム(動的評定尺度)を用いて,評定判断における心的過程や意思決定過程を明らかにしようと試みる. 申請した計画では,平成23年度 A)データの蓄積 B)反応Formの設計による反応の違い C)Web版の作成 平成24年度 D)軌跡データ解析法の完成 E)動的評定尺度法の安定性 F)葛藤課題でのカーソルの運動特性 G)実空間動的評定尺度平成25年度 H)研究の総まとめ まとめその1)動的評定尺度法の総括 まとめその2)心理測定学への提言 まとめその3)意志決定理論への提言 の予定であった. この内 D)F)についてはほぼ完成し,国内学会発表2件,国際学会発表2件を行い,さらに学術誌に投稿しほぼ掲載決定となっている. また,評定尺度のデータを解析するうちに新たな発見(X)と問題点(Y)が見出されたので,これを研究計画に組み入れることとした.発見とはX)評定尺度を用いた相関係数の異常な性質,すなわち「カテゴリー数の異なる尺度同士の相関係数は1にならない」であり(簡単に数学的証明ができる),急遽「心理測定学への提言」の一部として学会発表し紀要論文にまとめた.また問題点とは(Y)評定尺度法でしばしば仮定される(潜在変数の)正規分布の根拠が不明確なことである.この問題を解決するための数理的・歴史的研究が進行中である(学会発表1件).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究計画では,平成23年度 A)データの蓄積 B)反応Formの設計による反応の違い C)Web版の作成 平成24年度 D)軌跡データ解析法の完成 E)動的評定尺度法の安定性 F)葛藤課題でのカーソルの運動特性 G)実空間動的評定尺度平成25年度 H)研究の総まとめ まとめその1)動的評定尺度法の総括 まとめその2)心理測定学への提言 まとめその3)意志決定理論への提言 であった.この内 D)F)についてはほぼ完成し,学術誌に投稿しほぼ掲載決定となっている.また,新たな発見(X)評定尺度を用いた相関係数の異常な性質,すなわち「カテゴリー数の異なる尺度同士の相関係数は1にならない」があり,急遽「心理測定学への提言」として発表した.また新たな問題点(Y)評定尺度法でしばしば仮定される(潜在変数の)正規分布の根拠が不明確なことであること,が浮かび上がってきたので,このための数理的・歴史的研究を組み入れることにした. その他の項目についてもB)C)を除いて計画以上に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
A)データの蓄積については,今まで通り進める.B)反応Formの設計による反応の違い,及びC)Web版の作成については,23年度はあまり進行しなかった.理由は,2009年頃からカーソル軌跡を取り込む市販のソフトウェアーが次々に発表されて,ソフトウェアーを自作する場合との得失を考慮しなければならなくなったからである.この問題は今年度中早期に解決したい.D)軌跡データ解析法の完成,F)葛藤課題でのカーソルの運動特性については一定の成果が得られているが,F)についてはさらに詰めて行きたい.また,急遽追加することとなったX)評定尺度を用いた相関係数の異常な性質の調査,Y)正規分布仮定の検討については,いわば余禄の部分であるので,9月頃までに決着をつけたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は人件費をまったく使用していない.理由はB)反応Formの設計による反応の違い,及びC)Web版の作成があまり進行しなかったからである.この分の余剰は無理に人件費として使用せずに,物品費,旅費(本年度は遠隔地の学会が多いため),その他(主として英文校閲代)として,ほぼ3等分して使用したい.
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