研究課題/領域番号 |
23530877
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山本 博樹 立命館大学, 文学部, 教授 (30245188)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | テキスト学習 / 学習支援 / 高校生 / 「倫理」学習 / 教科書 |
研究概要 |
本研究は,高校「倫理」教科書の読解学習を支援する標識化の有効性を構造方略の利用という観点から検討する。このために,23年度は,高校生の構造方略の利用に関する発達的制約に起因するつまずきの様相を4つの調査と実験で検討した。 調査1では大学生に小中高時代の教科学習のつまずきを調査した結果,社会のつまずきが高校で急増した。調査2では高校での教科のつまずきで最も深刻だったものを記述させた結果,公民のつまずきが際立ち,「倫理」の多さが示された。調査3では高校「倫理」のつまずきの原因を帰属させた結果,教科書学習における体制化過程への帰属の多さが示された。調査4では,概念中心に記述するテキストと,思想形成過程を説明するテキスト (順序型) を活用し,それぞれに標識無版と有版を作成。「思想形成過程の分かりやすさ」の評定では,順序型テキストを提示した高校生で,標識化効果が不鮮明だった。 実験は調査4に従い,4つのテキストを高1と大学生に提示し評定させた。構造方略利用の評定平均値より下位・上位群を構成し,方略利用×テキスト×標識の分散分析を行った。その結果,順序型テキストの場合,大学生では標識の無い場合には構造方略の利用程度によって評定値に差が出ても,標識を挿入すると差が解消された。一方,高校生では方略利用の程度により評定値に差は出るが,標識により差は解消しなかった。ここから,高校生の「思想形成過程の分かりやすさ」が高校段階独自の構造方略の利用を介して規定されることが示された。 上記から,高校になり教科学習のつまずきが増える中で,「倫理」のつまずきが顕著になり,これは教科書の読解学習に帰属されることが多いが,この基礎には構造方略の利用に関するつまずきが関わっていることが示された点は研究全体の推進に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は実験のみを企画していたが,4つの調査を実験の前に設定することで,実験のresearch questionをより確たるものにすることができた。結果として,調査は4回を重ねることになり,調査参加者も1000名を超えることになり,相応のコストを予定外にかけることになった。けれども,このために,繰り返すが,当初予定の実験において,期待以上の成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度で行った4つの調査と実験により,当初予定の目的を果たすことができたとともに,「現在までの達成度」で述べたように,research questionの明確化を進めることができたことは思いもかけぬ成果であった。同時に,23年度は達成は,当初計画の適切さをさらに裏付けることにもなった。よって,平成24年度においては,自信をもって,当初計画を進めることができると考える。 また当初予定を超える成果を得ることができた背景には研究実施に協力頂いた協力校の存在が大きいことも述べておかなければならない。調査実施の説明,調査票の授受,実施と,本来,研究者側がなすべきことを代替してくれた点は大きい。そのため,計上した交通費をかなりカットできた。このため,当初実施予定の国内出張を回避できたためため,平成23年度の研究費に未使用額が生じることにつながった。ただし,24年度は協力校の担当者が替わったことに伴って,当初予定の国内出張費を計上することになる。また,24年度実施分では,より多くの実験参加者が求められるために,23年度の未使用分については,その分に回したいと考えている。 総じて,予定外の経費節減のために未使用分が発生し,かつ,当初予定以上の成果を得るに至ったが,平成24年度は当初計画を着々と進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定の通りに使用していきたい。
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