研究課題/領域番号 |
23530877
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山本 博樹 立命館大学, 文学部, 教授 (30245188)
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キーワード | 教科書学習 / 学習支援 / 公民科「倫理」 / 高校生 / 構造方略 |
研究概要 |
本研究は,高校「倫理」教科書の読解学習を支援する標識化の有効性を構造方略の利用という観点から検討する。23年度は,綱要集の性格を持つ「倫理」教科書の学習で重要になると考えられる構造方略に着目し,これに起因する高校生のつまずきの様相を検討した。これを受けて,続く,24年度は,高校生における構造方略の熟達差が「倫理」教科書の学習を規定するメカニズムを2つの研究により検討した。 研究1では,高校1年生225人 (平均16.1歳) を対象として(大学生184人 (同20.7歳)を比較データとして採取),高校生の構造方略の熟達差が「倫理」教科書の学習のおよぼす影響を検討した。ここから,構造方略の熟達の基礎には,語彙や認知の発達といった前提要因が関わり,これらが下支えする形で発露する構造方略の熟達差が,「倫理」教科書の学習を規定していることが示された。 研究2では,高校1年226人 (平均15.7歳) を対象として(大学生162人 (同19.2歳)を比較データとして採取),高校生における構造方略の熟達差が「倫理」教科書を通じた学習目標の遂行を規定するメカニズムを検討した。ここから,「先哲の思想形成過程の分かりやすさ」を介して,「日本人としての在り方・生き方を考える手がかりとしての分かりやすさ」や「人間としての在り方・生き方を考える手がかりとしての分かりやすさ」を高めるプロセスに,構造方略の熟達差が介在するプロセスの存在が示された。 上記から,高校生における構造方略の熟達差が「倫理」教科書の学習を規定するメカニズムが示されることになった。このようにして得られた知見は,冒頭で記した本研究の目的を25年度に遂げるための重要な礎になったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は,高校生を対象に大規模な調査を2つ行うことができた。参加者も800人を数える大規模な調査であった。収穫として何より得難いのは,高校「倫理」教科書の読解学習を構造方略の熟達が規定しているという事実を得たことである。この知見は,25年度に実施する大規模な実験研究の貴重な基礎になったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度で行った4つの研究により,綱要集の性格を持つ「倫理」教科書の学習で重要になると考えられる構造方略に着目し,これに起因する高校生のつまずきの様相を検討する中で,research questionの明確化を進めることができた。これを受けて,24年度は,「研究実績の概要」で書いたように,高校生における構造方略の熟達差が「倫理」教科書の学習を規定するメカニズムを2つの研究により検討することができた。 いずれの年度においても,研究の実施に際して協力頂いた協力校の存在が大きかった。これは「有難い誤算」であり,研究者側がなすべき調査票の実施や授受といった実務上の手続きを代替してくれたことが,円滑で十分なデータ収集につながったと考えている。 総じて,上記のような「有難い誤算」も加わり,2年間の計画が遂行され,当初の目標が着実に進行している。最終年である25年度においては,本研究の目標が遂行できるように当初計画を着々と実行していくだけである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定の通りに使用していきたい。
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