研究課題/領域番号 |
23530881
|
研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
多鹿 秀継 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (30109368)
|
研究分担者 |
中津 楢男 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90133131)
|
キーワード | 算数問題解決 / 自己説明 / コンピュータ利用学習 / 縦断的研究 / メタ認知方略評価 / 小学生 |
研究概要 |
本研究は、算数問題解決に関する縦断的研究であり、問題解決支援ツールの開発と自己説明の効果を適切に診断することが目的である。本年度は、昨年度実施した小学4年生が5年生になったので、小学5年生が研究の対象となった。研究方法は昨年度と同様であり、研究時期は1学期から3学期の3期にわたった。具体的には、各学期の総合学習の時間の各週1回、2回にわたってコンピュータによる算数問題解決の自己説明訓練の学習を実施し、その1週間後に確認のための本テストを実施した。 研究目的を明らかにするために利用するデータは、①本テスト結果、②コンピュータ利用時の学習履歴、③コンピュータ利用後に解決過程を自己説明したノート、④筆記による自己説明用紙への回答結果、の4点であった。 小学5年生の3学期のデータに関しては、現時点において分析途中であり、2学期分のデータに基づいて概要を説明する。①本テスト結果は、1学期が平均 9.35 点(16 点満点、SD=2.78)であり、2学期が平均 12.00 点(16 点満点、SD=3.91)であった。コンピュータ上で自己説明を行うこと、コンピュータ上で解決した問題をどのようにして解いたのかをノートに再度自己説明すること、および筆記により自己説明を行うこと、の3点の自己説明の測定方法によって、児童の成績が上昇したことが認められる。 このことは、コンピュータ利用による問題解決の学習において、自己説明を行うことが児童の算数問題解決の成績を上昇させる要因の1つであることを示すと考えてよいだろう。ただ、この結果は、コンピュータ以外の他の自己説明の測定方法(ノートと筆記による自己説明)も、少なからず児童の問題解決の成績上昇に寄与していると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、算数問題解決に関する縦断的研究であり、問題解決支援ツールの開発と自己説明の効果を適切に診断することが目的である。本年度は、昨年度実施した小学4年生が5年生になったので、小学5年生が研究の対象となった。 本年度は縦断的研究の中間年であり、研究目的の1つであるメタ認知方略の支援ツールの開発に関しては、順調にその成果が認められる。すなわち、コンピュータ利用の自己説明による学習ツールは、学習後に実施された本テストの成績を徐々に上昇させていることが示された。小学4年生時に使用した問題に加え、コンピュータに取り込んだ文章題は、小学5年生で学習する割合の文章題も新たに追加して構成された。もちろん、割合の文章題を選択して解く小学5年生は、2学期までは皆無であった。3学期では、児童のコンピュータ利用の学習履歴を確認すると、割合の文章題を解いている児童が多く見られた。ただ、コンピュータ利用の学習ツールだけでは児童の問題解決力の促進には不十分と考え、今回は筆記式の自己説明ツールも加えた。この筆記式の自己説明ツールに対しては、児童の自己説明過程が明確に反映され、コンピュータ利用の自己説明学習ツールを補完するツールとして効果的であることが示された。 研究目的の他の1つであるメタ認知方略の評価モデルの開発に関しては、来年度の研究終了時までデータの収集を行い、総合的に吟味しなければならない。現在の段階では、メタ認知方略の評価するために使用した3種類の測定方法が効果的であることの指摘にとどまる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は縦断的研究の最終年度となる。そのために、これまでに開発された算数問題解決に関するメタ認知方略の1つである自己説明の問題解決支援ツールの運用結果を適切に評価し、児童の問題解決能力が適応的に対処できる能力として位置づけられるかを明確にする。 また、児童の問題解決能力がいくつかの自己説明ツールを使うことによって改善したかどうかを、メタ認知方略としての自己説明の評価を適切に実施し、今後の自己説明ツールの利用に資するモデルを開発する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は毎年海外の学会で発表を予定していたが、本務校の仕事によってその機会を逸してきた。結果として、研究費に翌年以降への繰越金が生じた。本年度は、国内の様々が学会での発表を心がけ、旅費とデータ分析の謝金を中心に研究費を使用する。
|