研究課題/領域番号 |
23530883
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
徳永 豊 福岡大学, 人文学部, 教授 (30217492)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 重度・重複障害 / 共同注意 / 発達支援 / コミュニケーション |
研究概要 |
新しい教育施策の展開により「特別支援教育」が重視されるようになってきた。しかし、広汎性発達障害に比べると重度・重複障害のある子どもへの対応は遅れている。本研究は、障害が重度な子どもに対する個別の教育支援を検討するために以下の2点を研究目的とする。 (1)これまでに開発してきた「学習到達度チェックリスト」と、「新版K式発達検査2001」による縦断的な発達評価を実施し、本チェックリストの併存妥当性を検討し、その改訂を行う。 (2)コミュニケーションの発達水準は1歳前後の場合が多く、共同注意の発達変化に焦点を当てた支援者との相互交渉の変化を分析し、個人差に対応した支援行動のモデルを提案する。 平成23年度は、重度・重複障害児の発達評価を中心に展開した。重度・重複障害児が教育を受けている特別支援学校の7名の教諭(各教諭2事例ないし3事例)に発達評価を依頼した。発達評価において代替手段が必要となる視覚障害及び聴覚障害、超重度の肢体不自由を除く重複障害の子ども(発達に著しい偏りが少ない小学部に在籍する子ども)を対象とした。 発達の程度が3歳以下と推測される子どもに、「新版K式発達検査2001」と「学習到達度チェックリスト」(徳永,2010)を実施した。「学習到達度チェックリスト」の発達評価について、「新版K式発達検査2001」をもとに併存妥当性を確認し、日常場面での共同注意関連行動を把握した。その結果に従って、「学習到達度チェックリスト」の項目を修正した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重度・重複障害児の発達評価を中心に、おおむね順調に進展している。しかしながら、東日本大震災の影響で、大学附属の臨床心理センターにおける被災者支援業務のために、部分的に研究遂行に影響があった。発達評価の依頼については、東日本の教諭を避けて実施した。また10名の教諭に依頼の予定だったが3名が困難になり、7名で進めた。「学習到達度チェックリスト」の項目の修正については、比較的予定どうりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に取り組めなかった発達評価については、西日本の特別支援学校の教諭に追加的に依頼し、特別支援学校を訪問しつつ実施する予定である。 平成24年度は「玩具遊びの相互交渉場面におけるデータ収集」に取り組む計画である。「2、3ヶ月」「5、6ヶ月」「8、9ヶ月」「14、15ヶ月」の発達水準と判断された子どもを対象に、玩具遊びの相互交渉場面(支援者との玩具遊び)及び支援者の段階的な働き掛け場面において、子どもと大人の行動を記録する。 玩具遊び場面において日常的な注視行動、共同注視や応答的共同注意、始発的共同注意の成立パターンを分析し、段階的な働き掛け場面では、働き掛けに応じる行動(応答的共同注意の形成まで)の発達特性を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、東日本大震災の影響で特別支援学校教諭に対する発達評価の依頼が困難となった件を含め、部分的に研究遂行に遅れがあり、346,375円が次年度使用研究費となっている。この経費については、追加の発達評価の依頼とその打合せの旅費(東京1回往復、大阪1回往復:約15万円)と小型動画カメラ(約20万円)の購入を計画している。 平成24年度の研究費は120万円であり、データ収集に必要な記憶媒体、消耗品等で約32万円、データ収集及び研究の打合せ(福岡-東京1泊2日2回と福岡-名古屋1泊2日1回)等で約28万円、さらに学術集会で(福岡-ロンドン)3泊4日1回で40万円、資料整理アルバイト料等で10万円、学会参会・印刷費等で10万円の使用計画である。
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