研究課題/領域番号 |
23530885
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研究機関 | 大分県立芸術文化短期大学 |
研究代表者 |
藤田 文 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (50300489)
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キーワード | 仲間関係 / 幼児期 / 交代行動 / 相互交渉 |
研究概要 |
本研究の目的は、幼児の三者関係における交代行動と自己主張性の関連を検討することだった。昨年度は、実験を実施するところまで研究を進めた。従って、今年度は、データの分析を進めることを主な研究計画としていた。実験は、4歳児と5歳児を対象に、同性同年齢の3人組を構成して行われた。まず子どもたちに、3種類のゲームの遊ぶ順番を決定する話し合いをしてもらい、その後、各ゲームで5分間ずつ順番に遊んでもらった。その様子をビデオ録画した。 今年度は、各ゲーム場面での子どもたちの交互交代行動の分析を行った。3種類のゲーム全てで5歳児が4歳児よりも交代回数が多かった。また交代の規準は、5歳児はゲームの行為を1回行って交代する1回交代が多いが、4歳児はゲームのすべてが終わって交代する全部交代やランダム交代が多いことが示された。従って、4歳児は、ゲームと自己の関係を中心にとらえているが、5歳児はゲームと自己の中に他者の存在を組み入れてとらえていることが明らかになった。また、ゲームの種類によって他者への要求が通じないものもあり、ゲームの種類によって幼児の相互交渉が異なることも示された。 さらに、次の分析として、話し合い場面の主張性とゲーム場面での交代行動の関連を検討した。これは、ケースの分析にとどまっているが、男児では、自己主張性に偏りが生じており、話し合い場面での自己主張性がゲーム場面での交代行動に影響を与えているケースが見られたが、女児では、その関連は低いことが示された。この分析を来年度はさらに対象人数を増やして進めていく。 今年度の結果は日本教育心理学会第54回総会で発表された。また、昨年度の結果を大分県立芸術文化短期大学研究紀要第50巻に論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度実施した実験のデータ分析を計画していた。ビデオでの行動記録を分析するために、行動コーディング解析ソフトを購入することができた。また、行動分析の視点に関して、専門的知識を提供していただくために広島大学の青木多寿子教授から指導を受けることができた。 話し合い過程の分析とゲーム場面の交代行動の分析がおおむね終了した。これらの分析結果を日本教育心理学会で発表し、大学の研究紀要にも論文としてまとめた。このことから、おおむね計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、話し合い場面で子どもの自己主張の程度とゲーム場面での交互交代行動の分析を実施した。年齢差や性差とともに、ゲームによる相互交渉の違いが確認された。 したがって、今年度は、さらに引き続いて、話し合い場面での自己主張性とゲーム場面での交互交代行動の関連について明らかにしていく。そのために、行動コーディング解析ソフトを使用した詳細な行動分析をさらに継続していく予定である。年齢差とともに性差が大きく見られるため、特徴的なケース分析についても記述していくことを予定している。 その結果を、日本教育心理学会、日本発達心理学会で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究結果をアメリカの発達心理学会であるSociety for Research of Child DevelopmentのBiennial Meetingで発表することを計画している。発表原稿はすでに審査をパスしており、4月に発表を行なったため、今年度の研究費で旅費と参加費を計上している。 また、行動分析のための行動コーディング解析ソフトウエアの追加が必要なため購入を予定している。これにより、行動の詳細な分析と行動の連続性の分析が可能になるため、相互作用分析による明確な結果が出せると考えている。研究報告書の印刷費も計上する。
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