本研究の目的は、幼児の三者関係における交代行動と自己主張性の関連を検討することだった。昨年度までに、4歳児と5歳児を対象に、同性同年齢の3人組を構成して、3種類のゲームの遊ぶ順番を決定する話し合いをしてもらいその後、各ゲームで5分間ずつ順番に遊んでもらう実験を行った。昨年度は、各ゲーム場面での子どもたちの交代行動の分析を行った。今年度は、ゲーム場面での相互交渉を詳細に分析することと、話し合い場面での主張性とゲーム場面での交代行動の関連を検討することを目的として、分析を進めた。 ゲーム場面での相互交渉については、相手への要求回数、順番確認行動、楽しみの共有の視点から分析した。分析の結果、まず要求回数については、4歳児での要求不成功回数が有意に多いことが示された。事例の検討により、4歳児では、実行者の他者配慮不足、待機者の要求のタイミングの悪さが要求不成功の原因となっていることが明らかになった。次に、順番確認行動については、5歳児で特に女児で多いことが示された。ゲームの種類によっても確認行動は異なることが示された。最後に、楽しみの共有という情動的な側面を笑い声や拍手を指標に分析した。その結果、4歳児の方が楽しみの共有が多いことが示された。 以上のことから、4歳児は、他者への配慮が少ない段階にあるが、一緒にゲームを楽しもうとする情動的な側面では他者との関わりを求めていることが明らかになった。一方で5歳児の方がうまく要求が伝わり、順番の確認をしながら他者との関係調整の能力を発達させていることが示された。 さらに、話し合い場面の主張性とゲーム場面での交代行動の関連を検討した。話し合い場面の主張性とゲーム場面での行動は、明確な関連を現在のところ見いだせていない。ゲーム場面でのリーダー的な行動の出現が少ないためだと考えられる。他の行動指標を今後分析対象とする必要がある。
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