研究課題/領域番号 |
23530887
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研究機関 | 独立行政法人大学入試センター |
研究代表者 |
内田 照久 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (10280538)
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研究分担者 |
大津 起夫 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10203829)
伊藤 圭 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (60332144)
内田 千春 共栄大学, 教育学部, 准教授 (20460553)
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キーワード | 教育評価 / 音声 / コミュニケーション / リスニングテスト / 対人認知 / 性格特性 / 声質 |
研究概要 |
本研究では,音声コミュニケーションに関する教育評価方法の開発を目的としている。従来の言語運用能力の評価に加え,今後の多文化共生社会で必要とされる論理的思考力,相手の特徴や意図を推測する対人的認知能力まで教育測定の対象とする。これらの多面的な能力を測るために,リスニングテストと総合試験を統合したコミュニケーション能力テストの開発を行う。新しいテストの開発にあたっては,(1)言語運用能力,(2)論理的思考能力,(3)対人認知能力の 3つの相に整理して研究を進める。研究期間内は,従来型のリスニングテストを土台に据えて言語運用能力の測定の現状を検証する。そして,教科横断型試験で測られる論理的思考能力を精査し,対話場面で必要となる要素を抽出する。さらに,音声の韻律的特徴と話者の性格印象の関係のモデル化を進め,対人的認知能力の個人差測定への拡張を図る。 (1) 従来型リスニングテストでの言語運用能力の測定方法の評価 昨年度から継続して,センター試験に「英語リスニングテスト」が導入されるまでの歴史的な経緯を検証した。共通第1次学力試験導入前の1970年代から,現在までの30年以上に及ぶ議論や動向について,歴史的な資料をトレースしてまとめた。今年度はその成果を学術論文として公刊した。 (2) 話者特徴の推論モデルと対人認知能力 音声の韻律的特徴の形で伝達される話者特徴に着目し,その認知的な推論能力を検討している。話者の個人性を担う声質に対象とし,声質を計算機で変換したリスニングテストを生成して,聴覚実験を行った。今年度は特に,声質表現語による主観評価の実験も導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として,学会誌に論文が採択されて公刊され,また学会での発表も進んでおり,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,音声コミュニケーション能力テストと一般教科科目のテストの相違点,それぞれの特徴について,さらに詳細な分析を進める。そこでは,センター試験のような大規模試験におけるリスニングテストと,他教科科目のテストの関係に関する検証を深める。 また,リスニングテストに用いられる音声について,話者性の影響をより深く検討する。次年度は特に,声の太さや響きにあたる声質(音声スペクトルの周波数軸上での伸長圧縮)を対象とし,音響属性を操作した変換音声によるリスニングテストの問題を作成し,検証を進める。その変換音声に関しては,発声器官としての声道長との関連性も吟味して,生態学的な妥当性の検討も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度,声質変換リスニングテストの実験の継続を予定している。この実験にあたっては,声道長推定の計算を伴う操作が必要となる。当初計上した平成26年度の予算では,信号処理のための計算機の保守管理のための経費の不足が予想される。ついては,次年度の実験を円滑に進めるため,本年度の経費を繰り越して利用することとした。 変換音声リスニングテストの実験を引き続き進める。そのためには音声信号処理を行うための計算機の保守整備,実験準備業務に関わる経費が引き続き必要となる。ついては,本年度の研究経費の一部を繰越して次年度分と合わせ,必要となるリソースとして活用する。
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