研究課題/領域番号 |
23530888
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
池田 忠義 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (70333763)
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研究分担者 |
吉武 清實 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (80111243)
堀 匡 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (70512565)
佐藤 静香 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助手 (30344641)
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キーワード | 大学におけるハラスメント / 累積的事例研究 / 被害者・加害者 |
研究概要 |
大学におけるハラスメントに関する新聞報道および判例を集積・分析し,その特徴について検討した。その結果,新聞報道は,平成6年から平成23年の間に203件あり,平成11年以降一定の増減傾向は見られないが,平成15年以降,アカハラの占める割合が増え,判例でも,アカハラの増加傾向が見られた。また,被害者は学生が中心(78.3%),加害者は教員が中心(94.1%)であり,被害者-加害者関係は,「学生-教員」が大半を占めた。アカハラの具体的内容は,4つの大カテゴリ(①上下関係に根ざした攻撃的言動,②学業・業務上の影響力の不当な行使,③暴力的行為,④アカハラ)と,12の中カテゴリに分類でき,アカハラの大半は攻撃的言動という形を取り,そこに理不尽な対応や要求を伴う場合が少なくないことが明らかになった。 相談事例をデータベース化し,それに基づいて,ハラスメントの種類,被害者・加害者の特徴,来談者のニーズ等についての分析を行った。その結果,ハラスメントの種類はアカハラが大半であり,被害者は大学院生が中心であることが明らかになった。また,具体的な内容として,アカハラは,①攻撃的言動,②修学・研究上の不当な制限や要求,③指導放棄,セクハラは,①性的な内容の発言,②性的意図を持った身体接触,③性被害,④脅威を与える言動,が中心であった。来談者の要望としては,相手への多働きかけ,学業に関する環境等の改善,学生生活上の支援,来談者への働きかけ,実状の把握などがあり,早期対応と予防を望んでいることが明らかになった。一方,相談員は来談者の要望に沿った具体的な問題解決法を考慮して助言すると同時に,来談者の心身状態や生活状況をアセスメントし,必要な支援を判断・実践していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
相談の事例を集積したデータベースを作成し,それに基づいて,被害者・加害者の特徴,来談者のニーズ等についての分析を行ったが,来談者の心理状態やその変化に基づいた有効な援助法についての分析が十分進んでおらず,その分析を詳細に行うことによって,来談者への多面的援助のあり方を検討できる。
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今後の研究の推進方策 |
ハラスメント相談の事例のデータベースに基づき,被害者・加害者の特徴やその関係性,ハラスメントの発生機序,来談者の心理状態の変化に応じた有効な援助のあり方を検討する。 次に,来談者への多面的援助や問題の発生予防のための臨床心理学的援助・介入モデルを検討する。具体的には,以下のような分析を行う。 (1)来談者の心理状態・援助ニーズとその変化に基づいた来談者への働きかけ,関係者との連携のあり方の検討 (2)現在行われているハラスメント問題についての予防活動に関する情報収集・分類 (3)大学のおけるハラスメント問題についての有効な予防活動のあり方の検討
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,ハラスメント相談における来談者の心理状態やその変化に応じた援助法に関する分析を延期することによって生じたものであり,その分析に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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