研究実績の概要 |
ロールシャッハ法において、新たな変数として被検査者の反応に対する主観的評価スケールを導入し、他の既存の変数とともに、精神病レベルにある患者群(19名)と非精神病(パーソナリティ障害群)(22名)との鑑別に有用な各指標の組合せを検討した。 判別分析の結果、Xu%のみが両群を判別する指標としての価値を有していた。これは、X-%やspecial score(level 2)が診断的価値を持つという従来の知見とは異なるものである。これを詳しく検討するために、各群ごとにXu%との相関係数を検討した結果、精神病群においてのみ、主観的評価との有意な相関が認められた( r = -0.47, p<.05 )。同様に、非精神病群においては、X-%のみと有意な相関が認められた( r = -0.60, p<.01)。また、両群ともX+%とX-%は有意な負の相関が認められた。 両群に認められた負の相関関係や非精神病群においてのみ認められた負の相関関係は、反応の質という点において論理的にみても妥当である。しかしながら、精神病群においてのみ認められた、主観的評価が高くなるとXu%が低下する(あるいはその逆)という負の相関関係については、精神病的ではないが正常とは質的に異なる患者の部分と主観的反応評価との関連性を明らかにしたという点で、興味深い知見であると思われる。また、これらの検討を重ねることで、鑑別診断的価値を有する新たな指標の作成に関して、有益な知見を提供するものであろう。
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