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2012 年度 実施状況報告書

セラピストの発話に関する言語論的分析と訓練モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 23530895
研究機関京都大学

研究代表者

大山 泰宏  京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00293936)

キーワード国際研究者交流 英国
研究概要

セラピスト発話のコーパス作成に関しては,雑誌『心理臨床学研究』に掲載された事例研究論文を中心に作成した。
その過程で,言語的に定位できないトラウマ体験に関して,どのようなアプローチが可能であるのかを探究する必要が生じた。精神分析において,当初からトラウマと同時に非言語的な側面や関係性において重要な着目をしていたFerencziに関する学会(ハンガリーで開催)に参加し,トラウマに関する心理療法に関する情報収集および情報交換をおこなった。
また,日本語および日本的心性に着目した葛藤の収め方という観点から,日本の伝統芸能である「能」に着目し,曲の構造分析,表現に関する身体的技法などを研究すべく,観世流能楽師を招いてワークショップとシンポジウムを開催した。この研究結果から,葛藤の統合ではなく,相反する矛盾のcontainという観点から,さらに,日本語における心理療法の言語的側面に関して考察した。その結果は,平成25年度8月開催の国際学会において発表予定である。
心理療法のプロセスに関して,また,言語的側面ばかりでなく,沈黙に関する重要性にも着目し,ロールプレイを用いたアナログ研究にもとづき,日本での心理療法における沈黙の意義について考察し論文化したものを,共同研究として国際学会誌に投稿し,掲載が決定した。
さらに,言語使用を発達的観点から検討するために,英国アンナ・フロイトセンターより研究者を招聘し,精神分析からみた言語的発達と理解に関する情報提供や講演会を開催した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の目的であった「言語論的分析」以上に,非言語的側面が重要であることに直面し,その知見をどのように言語論的な分析に統合していくかが目下の課題であり,本年度はこの点の解明に関して,時間がかかることとなった。この意味では,本研究の課題そのものに関しては,自己評価としては「やや遅れている」という評価であるが,当初意図していた研究の幅よりも,さらに豊かであり実際の心理療法場面に則した研究結果が得られる見通しもたってきた。
コーパスに関しては,そのカテゴリーの生成において,研究者が意図していた以上のカテゴリーが出てきにくいという問題に直面している。質的研究の方法論を見直す必要を感じており,現在いくつかの方法を実験的に工夫中である。

今後の研究の推進方策

第一に,言語論的な分析の進展である。これに関しては,当初の計画どおり,コーパスをもとにしたセラピストの発話の分類,その機能の評価などをおこなっていく。その際,言語論による文の構造や種類による観点に加え,発話行為としての意義を含めて検討をおこなう。
第二には,発話の非言語的側面に関する分析の進展である。これに関しては,新たな研究グループを組織して,研究分担者として加え活動する予定である。代表者は主に言語論的な分析を担当し,それと結びつく形で研究分担者らを中心とした非言語的側面の研究を進める。
第三には,言語が位置づき理解される,日本的な心性に関する研究の進展である。24年度に引き続き,「能」のスクリプトや構造の分析を例示として対比させながら,日本の心理療法にみられる葛藤や矛盾,トラウマ等の収め方に関して,研究協力者との共同研究をおこなう。

次年度の研究費の使用計画

研究推進の第一の方向に関しては,引き続きコーパスの作成をおこなうために,学生のアルバイト謝金が必要となる。またコーパスの分類や機能に関する評価をおこなう際に,心理臨床の専門家による会議を開催するため,謝金が必要となる。
第二の方向に関してはロールプレイの映像作成とビデオ記録の解析などに関して,やはり謝金が必要となってくる。また,大容量の記録媒体などの購入の必要性が生じてくる。
第三の方向に関しては,国際学会で共同研究として発表をおこなうことが決定しているため,外国旅費が必要となる。
総じて,今年度は本研究の最終年度にあたるために,結果をまとめた報告書の作成が必要となる。報告書に関しては,紙媒体での印刷は必要最小限にとどめ,オンラインによる公開を主とする予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Implication of silence in a Japanese psychotherapy context: a preliminary study using quantitative analysis of silence and utterance of a therapist and a client2013

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka, C., Kuwabara, T.,Yoshikawa, S., Watabe, M., Komori, M., Oyama, Y., & Hatanaka, C.
    • 雑誌名

      Asia Pacific Journal of Counselling and Psychotherapy

      巻: 4 ページ: 147-152

    • DOI

      10.1080/21507686.2013.790831

    • 査読あり
  • [学会発表] Learning from Noh: From a Conflict-Intergration Model Toward a Paradox-Containing Model in Psychotherapy2013

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Tomatsu, Arata Sakai & Yasuhiro Oyama
    • 学会等名
      3rd Asia Pacific Rim International Counseling & Psychotherapy Conference 2013
    • 発表場所
      Sarawak, Malaysia
    • 年月日
      20130815-20130818

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公開日: 2014-07-24  

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