前年度から実施してきている妊婦へのアンケート調査を、最終的にまとめることができた。具体的には、福井県のある市において、保健管理センターに、妊婦手帳の交付や妊婦教室に訪れた約200名にアンケートの協力をお願いし、63名からの郵送による回答を得ることができた。さらに、大学近隣の3つの産婦人科医院にお願いして、妊婦さんへの調査協力の依頼を行い、87名の方から、返信を頂くことができた。合計150名のアンケート結果をもとに、分析を行った。まずは各尺度の因子分析を行い、妊婦の意識としては「出産への肯定感」「出産への不安・苛立ち」の2因子が抽出された。また、夫の関わりの意識においては、「肯定的関与」「家事の分担」の2因子が抽出された。それに、内的作業デル(IWM)の尺度得点を加え、3つの尺度において、まず妊婦の就業状況(専業主婦・常勤職・非常勤・退職)による差があるかを検討した。 その結果、退職者においては、不安苛立ちの得点が高く、専業主婦は、夫の家事分担をそれほど高く求めていないことが示された。さらに、IWMとの関連では、親密性と見捨てられ不安の組み合わせによって、出産への肯定感や夫の肯定的関与が、異なって受け止められることが示された。さらに、親密性の高い妊婦にとって、見捨てられ不安を高く感じるか、低く感じるかで出産への肯定感は、大きく異なってくることが示された。なお、これらの結果は、平成25年8月に行われた、第7回国際家族心理学会(東京)において、発表を行った。 さらに、アンケート時にお願いしていたインタビューへの協力依頼に対し、応えていただいた5名の方にインタビュー調査を実施した。インタビューでは、妊婦としての意識の変化や、夫との関係性の変化などを尋ね、逐語を修正版グラウンデッドセオリーアプローチにより分析を行い、平成26年度の日本人間性心理学会において、発表予定である。
|