研究課題
本研究は,投影法課題遂行中の脳血流動態をMRIを用いて測定し,投影法課題がもつ特徴を脳活動の観点から理解することをめざすものである。今年度においては,前年度までにおける検討を踏まえ,ロールシャッハ法(RIM)と比較のための対照課題(都道府県地図を加工した画像刺激を提示し県名を答える課題;地図課題)を用いた実験パラダイムを作成し,両課題実施中の脳活動をMRI装置を用いて測定した。実験協力者は非臨床圏の成人40名(男女各20名,年齢の平均24.649±4.796歳)であり,全員が右利きであった。脳機能の計測にはGE社製3.0T MRI装置を使用し,データの解析にはSPM8を使用した。両課題遂行時における脳血流量を比較したところ,RIM課題遂行時には扁桃体,海馬,視床,紡錘状回,背外側前頭前野(DLPFC),眼窩前頭野(OFC),下前頭回(IFG),中前頭回(MFG),前帯状回(ACC),などの領域で有意な賦活が認められた。いっぽう地図課題においては後帯状回(PCC),頭頂後頭接合などでの有意な賦活が示された。同じ漠然図形でありながらRIM課題には正答がない一方,地図課題には正答がある。両課題間における差はこの正答の有無が影響している可能性が考えられる。またRIMにおいて墨色のみの図版群と色彩が含まれた図版群との比較をおこなったところ,墨色のみの図版群では海馬,前頭眼野,STG,上頭頂葉,下頭頂葉における有意な賦活が示された。一方有色彩図版群ではOFCと第4次視覚野(V4)で有意な賦活が認められた。RIMで支持されてきた色彩反応と情動統制との関係を改めて検討する必要性が示唆された。
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発達人間学論叢
巻: 17 ページ: 77-82