研究課題/領域番号 |
23530898
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
遊間 義一 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70406536)
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研究分担者 |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 教授 (50233854)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 刑務所の反則行為 / 成長混合モデル |
研究概要 |
本研究は,女子受刑者の刑務所内での反則行為を対象として,その促進・抑制要因を,受刑者の個人的属性と,収容率などの刑務所内での環境要因や処遇手法の相互作用という観点から検討しようとするものである。 計画段階では,平成23年度中に,反則行為に対する個人的要因と,環境要因等との交互作用を検討し,平成24年度中に,成長混合モデルを用いて,反則行為には,どのようなパターンが存在するのかを検討する予定であったが,予備的なデータ解析の結果,この順序を逆にし,平成23年度に成長混合モデルの検証を行った。 データ解析の順序を当初計画と反対にした理由は,これまでの分析で得られていた,"昼間働いている工場の収容率が反則行為を促進している"という知見とは異なった結果が得られたためである。つまり,受刑者を「違反頻回者」と「そうでない者」とに区別して分析すると,反則行為に対する収容率の影響は認められなかった。このことは,先行研究の結果と併せ考えれば,収容率は,収容のごく初期に違反頻回者を増やす効果を有し,その後は,受刑者の反則行為の頻度を変化させないということを示唆している可能性がある。したがって,収容率の効果を検証する前に,頻回者とそれ以外の者のとの間に,反則行為の推移に関して異なったパターンが見いだせるか否かを検証する必要があることになる。 そこで,平成23年度の後半は,Multiple group multiple cohort growth modelの手法を用いて,全収容期間中の反則行為の推移のパターンを見いだす試みを行った。現在解析中であるが,予備的な解析では,いくつかの質的に異なるパターンが見いだせている。今後は,これらのパターンを確定するとともに,パターンに収容率や処遇方法がどのような影響を与えているかを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階では,平成23年度中に,反則行為に対する個人的要因と,環境要因等との交互作用を検討し,平成24年度中に,成長混合モデルを用いて,反則行為には,どのようなパターンが存在するのかを検討する予定であったが,予備的なデータ解析の結果,これまでの分析で得られていた,"昼間働いている工場の収容率が反則行為を促進している"という知見とは異なった結果が得られた。具体的には,受刑者を「違反頻回者」と「そうでない者」とに区別して分析すると,反則行為に対する収容率の影響は認められないという結果を得た。このことは,先行研究の結果と併せ考えれば,収容率は,収容のごく初期に違反頻回者を増やす効果を有し,その後は,受刑者の反則行為の頻度を変化させないということを示唆している可能性がある。したがって,収容率の効果を検証する前に,頻回者とそれ以外の者のと間に,反則行為の異なったパターンが見いだせるか否かを検証する必要があることになる。 そこで,平成23年度の後半は,Multiple group multiple cohort growth modelを用いて,全収容期間中の反則行為の推移のパターンを見いだす試みを行った。現在解析中であるが,予備的な解析では,いくつかの質的に異なるパターンが見いだせている。今後は,これらのパターンを確定するとともに,パターンに収容率や処遇方法がどのような影響を与えているかを検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成23年度に行った,Multiple group multiple cohort growth modelを用いて,女子受刑者の全収容期間中の反則行為の推移のパターンを見いだす試みを継続し,類型を確定する予定である。この結果を,日本犯罪心理学会,アメリカ犯罪学会等で発表し,専門家の意見を徴し,さらに精緻なモデル化を行う。 次に,このモデルに基づき,刑務所における居室や工場の収容率等の環境要因や収容中に実施されるカウンセリング等の処遇要因が,受刑者個人の反則行為のパターンにどのような影響を与えるのかを検証する。具体的には,カウンセリングの実施が,受刑者の反則行為の生起パターンに影響を与えるのか,与えるとしたら,どのような影響を与えるのか(例えば,頻回反則者から散発違反者に移行するとか,パターンは変化せず,頻度が若干減少するのかなど)を検証する。 最終的には,環境要因や処遇要因とパターンとの交互作用の検証を行う。例えば,頻回反則者にはカウンセリングは反則行為減少のために効果があるが,散発反則者には効果がないなどの結果が予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は研究の最終年度であり,Multiple group multiple cohort growth modelなどの数理モデルを,現実に合うようにこれまで以上に複雑にモデル化した上で計算する必要がある。モデルの計算にはかなりの時間を要すると予想されるので,比較的性能のよいコンピュータを購入し,研究の効率化を図る。当初の計画ではコンピュータは平成23年度に購入予定であったが,できるだけ現有のコンピュータを使用し,性能が統計計算に追い付かなくなった段階で新規に購入することとしたため,次年度の購入予定とした。 さらに,研究の最終段階として,アメリカ犯罪学会などの国際学会や国際会議での口頭発表及び論文発表を計画している。そのための旅費や翻訳などの費用も必要であり,これらの支出も予定している。
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