研究課題
本研究の目的はマインドフルネスと幸福感および心配との関連を検討することである。平成24年度には,幸福感と心配の相互関係や,マインドフルネスと活動性が幸福感に及ぼす影響について縦断調査を行った。また,マインドフルネスと幸福感の関連を注意機能が調整することも見いだした。さらに,マインドフルネスと道徳判断との関連も見いだした。(1)心理的幸福感が高いと,心配に対する素因(自分の思考や感情を過剰にネガティブに評価する傾向)が高くても,心配(全般性不安障害の症状)が高くなりにくいことを縦断調査によって明らかにした(大学生297名)。(2)マインドフルネス傾向が高いと身体症状に注意を向けても生理的反応に対するコントロール感が低下しないことが分かった(大学生167名)。(3)日常的な活動性と幸福感の関連について縦断調査を行ったところ,マインドフルネスの傾向の高い人は幸福が活動性に左右されない(逆に,マインドフルネスの傾向の低い人は活動性が下がると幸福感が低下する)ことが明らかになった(大学生221名)(4)マインドフルネスの中でも注意のコントロールと関係の深い「自分の行為に対する気づき」の傾向の高い人は,偶発的に誘導されたネガティブ気分(嫌悪感)が道徳判断に波及しにくいことを明らかにした(大学生92名)。(5)注意機能が,マインドフルな観察が幸福感の向上につながるかどうかを調整していた(大学生30名)。最後に,多様な社会的背景をもつ参加者(男女各400名,年齢20-59歳)を対象としたウェブ調査を実施した。収入,職業,教育などの変数も含めてマインドフルネス,心配,幸福感の関連を解析している途中である。
2: おおむね順調に進展している
複数の調査を行い,興味深い知見もえられており,論文化もすすめている。コミュニティ調査の企画には予想よりも時間がかかったが,次年度は平成24年度の経験とノウハウが活かせると考えられる。
平成25年度は,コミュニティ調査を行うことと,これまでの成果の公表を行うことを予定している。平成23年度,平成24年度の研究では,マインドフルネス傾向が他の変数が幸福感や心配に及ぼす影響を調整する,というパターンが多くえられている。そのような調整効果を検出できるようなデザインの調査を行う。また,コミュニティ調査の中でも縦断調査を行う可能性もある。
調査実施にかかわる費用,論文校閲費用,成果公表旅費の割合が大きくなる。
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Plos One
巻: 7 ページ: e34244
doi:10.1371/journal.pone.0034244
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doi:10.1371/journal.pone.0047221
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