研究課題/領域番号 |
23530902
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
葛西 真記子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70294733)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / セクシュアル・マイノリティ / 性的指向 / 地域支援 / 心理教育 / 性同一性障害 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
第1の目的である四国でのLGBT地域援助に関して、まず、「SAG徳島」という地域支援の拠点を鳴門教育大学内に発足した。運営委員9名で月に1度の運営委員会を行った。活動として、地域支援のための情報発信や当事者や関係者との交流会も開催し、徳島、四国以外からの参加者もあった。LGBTに関する国内外の活動状況の把握を行い(担当:葛西、岡橋)、国内外の文献収集を行った(担当:葛西、伊藤、久保)。連携研究者が四国内で行っている地域支援や、活動状況の視察(担当:葛西、伊藤)を行い、現状を調査した。文献からは、日本のLGBTに関する歴史的背景や社会事情が明らかとなった。また、日本の同性愛・両性愛の方々にとって必要なサポートについて調査を行い、学会で発表した(伊藤・葛西、2011、日本心理臨床学会)。アメリカの地域支援を行っている連携研究者との情報交換を行い、平成24年度に日本で両国の交流を行うこととなった。次に、第2の目的のプログラムの作成と実施については、これまでのプログラム内容を「LGBセンシティブカウンセラー養成プログラム」として学会誌に投稿した(葛西・岡橋、2011、心理臨床学研究)。投稿した内容から、他大学、他機関、他学会からのプログラムに関する問い合わせが多数あり、県外(高知)においてもプログラム内容を紹介した。さらにプログラムを発展させるために、このプログラムで含めなかった性同一性障害の内容についても研究するために、性同一性障害の方々へ調査を行い心理的側面について学会発表を行った(久保・葛西、2011、日本心理臨床学会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)地域支援の拠点である「SAG徳島」を立ち上げ、県内外からの参加者がある。(2)「SAG徳島」のホームページを立ち上げ、セクシュアル・マイノリティに関する様々な情報発信し、多くの問い合わせがあった。海外文献の収集と整理も行い、随時ホームページに掲載した。(3)東京で開催された「LGBT成人式」にも協賛団体として支援を行った。(4)LGBセンシティブ・プログラムを学会誌に投稿したことで、他の研究者、大学、学会からのプログラム依頼がある。(5)アメリカの連携研究者との情報交換から、平成24年度の国際シンポジウムという形で、交流が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に収集した資料等をもとにLGBTセンシティブ・プログラムを開発する(担当:葛西・岡橋・伊藤)。プログラムの内容としては、LGBTについての情報を得るということだけでなく、LGBT当事者に対して肯定的な支援が行えるように、以下の内容を含める。(1)カミング・アウトとLGBTに対する感情やIdentityへの早期の気づき、(2)Identityのマネージメント、つまりLGBTクライエントのIdentityの再定義、(3)内面化されたホモフォビアと、そのIdentity形成への影響、(4)社会的ホモフォビアと異性愛主義に対する反応。 LGBTセンシティブ・プログラムを学校現場の教職員、臨床心理士を対象に行う(担当:葛西・岡橋)。その内容には、思春期に自己の性的指向に気づく過程、探索する過程、深める・関与する過程、内在化・統合の過程 (McCarn & Fassinger, 1996; Mobly, 2005)という4つ、LGBの自我同一性の発達の過程や、そのときにどのような支援が学校現場でできるのか、どのような態度が肯定的・否定的であるのか、保護者や周りの生徒への働きかけ、地域への働きかけとして何ができるのか等についても含める。そしてその効果について、尺度を用いて検証する。しかし対象がカウンセラーではないので、尺度の項目を学校現場にあうように修正する(LGB-Teacher Efficacy Inventoryの作成)。 地域援助の拠点に関しては、収集した情報・文献をもとにデータベースを継続して作成する。四国におけるLGBT関係のネットワークを広げ、その情報の発信を行う(担当:葛西・岡橋・伊藤・久保)。アメリカで地域支援を行っている方との交流を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、四国、中国圏内などの比較的近距離のSexual Minority支援団体等との情報交換を行ったため、使用予定研究費に残額が生じた。平成24年度は、近畿、首都圏にその範囲を広げるとともに、連携研究者であるRooney, Cをアメリカから招集し、国際シンポジウム、交流会を開催予定である。そのために以下の(2)、(4)の費用が予定より多く必要となる。それ以外にも前年度に引き続き(1)(3)の費用の使用を計画している。(1)「SAG徳島」の運営、情報収集、データベース作成(謝金、図書費)(2)交流会の開催(準備のための物品、宣伝のための広告資料作成費)(3)プログラムの実践(物品、交通費、謝金)(4)情報交換(旅費)、国際シンポジウムの開催(旅費、謝金)
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