研究課題/領域番号 |
23530902
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
葛西 真記子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70294733)
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キーワード | セクシュアルマイノリティ / 地域支援 / カウンセラー訓練 / 教師教育 / 国際研究者交流(アメリカ) |
研究概要 |
本研究課題の二つの目的は、①セクシュアル・マイノリティの方々の地域援助の拠点を設け、情報・心理援助を提供すること、②学校現場の教師、カウンセラー等を対象としたセクシュアル・マイノリティ理解を促進するプログラムの開発・実践である。 第一の目的に関しては、平成23年度に発足したLGBT地域援助の拠点である「SAG徳島」の運営は、運営委員が15名に増え、活発な交流会の開催、国際シンポジウムの開催を行うことができた。国際シンポジウム開催のたまに研究代表者が米国へ視察、情報交換に赴き、平成24年9月に連携研究者を招へいした。鳴門、広島で国際シンポジウムを行い、大阪、東京にて、LGBT支援団体等の視察を行った。また、連携研究者との共著である「Reproductive Justice:A Global Concern」の中の1章を執筆した(Kasai & Rooney, 2012)。さらに支援を通して得られた知見をもとに研究論文にまとめ(伊藤・葛西,2012)、「米国の性指向に関する適切な心理療法的対応」の報告書を共同翻訳した(佐々木・葛西他,2012)。 第二の目的に関しては、性同一性障がいを中心とした「トランスジェンダー・性同一性障がいセンシティブ・プログラム」を開発し、人権教育の場で学校の教員、心理援助を行う団体、人権に興味のある一般の方々を対象に実践を行った。それぞれにおいて、参加者から「これまで考えたことがない視点であった」「これまで対応した児童生徒の中にもいたように思う」「適切な対応方法を知ることができてよかった」等の評価を得た。また、同性愛・両性愛に関するプログラムの内容に関連して、日本における同性愛・両性愛アイデンティティの発達に関する研究も行い、日本人の研究協力者にインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の目的であるLGBT地域援助の拠点作り、他の地域の拠点との交流、国内のLGBTに関する文献収集、歴史的背景、社会情勢の把握に関しては、計画とおり達成している。横浜の地域支援の拠点であるSHIPの視察は行えていないが、LGBTに関する事例検討会に参加し、関東における様々な支援についての情報交換を行った。 また、心理的支援として、個人カウンセリングについてSAG徳島のホームページにも記載したところ、メールでの問い合わせが多くあり、また実際に来談し、カウンセリングを行った方もいる。現在も継続中である。交流会においては、集団カウンセリングの要素も取り入れ、自助グループ的なかかわりも行っている。 第2の目的であるプログラムの作成と実施に関しては、これまでのLGBに焦点をあてたセンシティブ・プログラムを拡大させるために、性同一性障がいやトランスジェンダーに焦点をあてたセンシティブ・プログラムを作成した。そして、そのプログラムを県内の様々な団体等に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
地域援助に関しては、徳島県内広くセクシュアル・マイノリティに関する情報を知ってもらうために、8月と10月に「徳島カラーフリー映画祭」を行う予定である。そのためにすでに映画祭を行っている他県の情報収集を行い、実施について知見を得る。 プログラムの開発・実践に関しては、平成24年度に作成したトランスジェンダー・性同一性障がいとLGBの内容を合わせたプログラムを作成し、学校現場の教職員、スクールカウンセラーに実践する予定である(6月、7月、8月、9月)。平成25年度は、その効果について測定し、プログラムの効果を実証する。プログラムの中には、日本の同性愛・両性愛のアイデンティティの発達についてのインタビューから明らかになった内容も含める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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