研究課題/領域番号 |
23530904
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 玲仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70411121)
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研究分担者 |
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
長岡 千賀 京都大学, こころの未来研究センター, 助教 (00609779)
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キーワード | 風景構成法 / 作用機序 / 身体動作 / 描画法 / 描画プロセス / 非言語 / 対人相互作用 |
研究概要 |
当該年度には,研究論文[長岡千賀・佐々木玲仁・小森政嗣・金文子・石丸綾子(2013):行動指標を用いた心理臨床の関係性に関する定量的検討-描画法施行場面を題材として-,対人社会心理学研究,印刷中]が採択された。本論文では,心理臨床家が専門性の中での日常的行為として行っている描画法において,描画場面や描画者,描画そのものをどのように受け取っているかという非常に言語化しにくい内容と,描画プロセス中に生じる描画者の身体動作という客観的に測定可能なものが関連しているということを示すことができた。具体的には,心理臨床家が描画場面を充分に機能していると感じた描画場面では,描き手のアイテム描画後の動作セットが描画プロセスの進行に従って一定してくるという傾向を示すことができた。これは本研究の目指す風景構成法の作用機序の解明への基礎となるものであり,今後の発展が期待できる。 次に,本年度は描画場面の見守り手(施行者)の描画場面評価の精密化として,他の心理療法家による描画場面評価を行った。今回実際に風景構成法場面で施行を行った見守り手ではない心理臨床の専門家に描画場面の映像を提示し,独立に評価を行ってもらった。これにより,見守り手の評価と大枠においては矛盾しない結果が得られた。また,この評価の施行によって,より多面的な描画場面評価の視点を得ることができた。 さらに,現在検討中の風景構成法描画について,描かれた描画の主要な指標である「構成型」についての評価を行った。構成型概念の提唱者である甲南大学の高石恭子教授と本研究グループで独立に構成型を評価し,一致しなかった所は協議を行って,全データの構成型を決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文を1本掲載決定され研究の成果の一部を公表することができた。また,この掲載に至るプロセスで研究メンバーである臨床心理学者と認知科学者とのディスカッションにおいて,風景構成法場面で生じている心理的,身体的現象についての言語化が,それぞれの研究者の研究分野内で行われる範囲を大きく超えて進展した。このことにより今後研究を行っていく上での基盤をつくることができた。研究グループ以外の心理臨床家による描画場面評価とその言語化によっても同様に描画場面の言語化が進展し,これまでにない研究視点を得ることができた。さらに,データの構成型を確定することができ,分析がより進んだといえる。 一方で,イメージの自律性の検討や新たな調査場面を設定しデータを収集することは行えていない。 上記のことを総合して,研究は概ね純情に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を元に,描画場面に生じる心的・身体動作的現象をより精密化していく。昨年度には主に認知科学的な視点からの論文を投稿したが,今年度はこれに加えて臨床心理学的な視点を中心とした論文を執筆,投稿し,描画場面の実践的な面からの検討を行うこととする。 また,昨年度検討した風景構成法の構成型に加えて,イメージの自律性,付加段階,彩色段階など個々の臨床的視点からの検討も行いたい。認知科学的視点としては,身体動作における見守り手と描き手の相互性や,見守り手の峻目などの身体動作の検討かからのデータ分析を行っていく。 さらに,新たに風景構成法施行の調査場面を設定し,今年度は本研究までに得られた知見の検証と新たな研究視点の探索を行うこととしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
定期的な研究打ち合わせ,及び日本心理学会,日本心理臨床学会,日本箱庭療法学会において研究発表をを行うために,国内旅費が必要である。また,映像の分析をより効率良く行うためにコンピュータ,周辺機器,映像再生装置などのさらなる充実が必要である。調査実施においては,被検者謝礼,データ分析補助のための人件費がこれまでよりも多額に必要になると思われる。また,本年は描画法,風景構成法の先行研究だけでなく,よりプロセス研究の行われている箱庭療法の研究も収集,分析を行うために,人件費,消耗品費が必要である。昨年同様,研究関連図書も充実させていく必要があるため,図書費も使用する。
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