研究概要 |
最終年度は,風景構成法施行の施行手順の一部に及び構成型についての詳細な検討と,見守り手の施行時の体験についての検討を中心に研究を行った。施行手順については風景構成法の付加段階について「風景構成法の付加段階に関する仮説の再現性の検討」として,見守り手の施行時の体験については「表現療法における見守り手の体験 ―風景構成法における見守り手体験の探索的検討―」として,それぞれ学会発表を行った。これらの検討により,風景構成法の機序についての知見が蓄積されたと言える。 研究全体としては,研究論文[長岡千賀, 佐々木玲仁, 小森 政嗣, 金文子, 石丸綾子(2013)行動指標を用いた心理臨床の関係性に関する定量的検討 : 描画法施行場面を題材として,対人社会心理学研究 13, 31-40]で論じているように,風景構成法の見守り手の主観的体験と描き手の身体動作の様相の関連を検討し,見守り手の教示と描き手の描画の交替の繰り返しを通して二者の関係性が成立していくプロセスを描き手の行動を指標として定量的に評価できたことが成果として挙げられる。また,この関連性については第三者としての心理臨床実践の専門家に描画時の映像を提示し,見守り手とは独立に検討した結果,見守り手の評価と矛盾しない結果を得ている。また,これらの結果と風景構成法の空間構成の様相を評価する「構成型」についての関連の検討も行っている。このように,風景構成法の機序について多様な視点から研究を行った結果,この技法の臨床的な有用性について実証的に示すことができたと考えられる。
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