研究概要 |
対人ストレスコーピングの実践的介入に先だち,小・中・高校生を対象にして,3種の対人ストレッサーそれぞれに対して,3種の対人ストレスコーピングの使用頻度と精神的健康との関連を検討した。対人ストレッサーは,(1)対人葛藤(他者が自分に対してネガティブな態度や行動を示す状況),(2)対人過失(自分に非があって相手に迷惑や不快な思いをさせてしまう状況),(3)対人摩耗(自他ともにネガティブな心情や態度を明確に表出してはいないが,円滑な対人関係を維持するためにあえて意に添わない行動をしたり,相手に対する期待はずれを黙認するような状況)の3つに分類される(橋本, 2005)。一方,対人ストレスコーピングは,(1)ポジティブ関係コーピング(対人ストレスイベントに対して,積極的にその関係を改善し,より良い関係を築こうと努力する),(2)ネガティブ関係コーピング(対人ストレスイベントに対して,そのような関係を放棄・崩壊する),(3)解決先送りコーピング(ストレスフルな対人関係を問題とせず,時間が解決するのを待つ)の3つに分類される(加藤, 2000, 2003)。対人ストレスコーピングの機能を検討した加藤の一連の研究(2000, 2001, 2002, 2003, 2004)では,「けんかをした」,「誤解された」,「嫌いな人と話をした」など様々な対人ストレッサーをひとまとめにした,いわば全体的な対人ストレッサーに対する対人ストレスコーピングに焦点が向けられている。そこで,橋本(2005)をもとに,対人ストレッサーを3種類に分類した上で,対人ストレッサーそれぞれに対する対人ストレスコーピングの効果をより詳細に検討した。また,対人ストレッサーの経験頻度や対人ストレスコーピングの使用頻度には,男女差が認められていることから,性差も考慮に入れた検討を行った。現在,得られたデータを分析中である。
|