1.研究の目的:本研究の目的は,高機能広汎性発達障害児・者の対人関係能力向上に集団心理療法の一技法である心理劇を主に用いて支援を行い、臨床心理学的に実践を行い、その効果を検証していくことである。その際、「対人関係の多重構造モデル」(髙原2011)をという視点(心理劇の場で起こる「現実の人間関係」と「心理劇の中での心理的現実の人間関係」の同時的体験)をもって、対象者に心理劇を施行し、発達段階や症状の違いによるその効果や技法を分析する。 2.今年度は今までの積み重ねられたデータの整理を主に行った。 1)事例の整理を行ったが、評価表の試案作成までには至らなかった。これは今後の課題として残った。2)成果発表・情報収集:九州発達障害療育研究会にて研究の成果の一部を発表した(髙原 2013)。また、西日本心理劇学会・日本特殊教育学会・日本自閉症スペクトラム学会等で研究の成果の一部を実践発表及びポスター発表した(髙原2013a、髙原2013b,髙原2013c)。さらに、各種学会/研究会等で講演や実践発表を行った。3)研究補助者(臨床心理士・学生等)の教育を定期的に行った。 3.研究の意義の重要性:児童期から青年期までの心理劇実践のデータを蓄積し、特別支援学校での「コミュニケーションの学習」等で活用したことである(髙原 2013a)。熊本大学教育学部附属特別支援学校中学部と高等部で特設した授業「コミュニケーションの学習」にて心理劇の技法の一部であるロールプレイを行い、自己理解・他者理解及び対人関係の促進に関する教育支援を試み、効果を得た。
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