研究課題/領域番号 |
23530909
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 岩手大学, 教育学部, 教授 (60305258)
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キーワード | 青少年 / 生活不安 / うつ / 自殺念慮 / 攻撃性 / 敵意 |
研究概要 |
平成24年度は我が国の中学生を対象に調査を行ったが、平成25年度は、さらに高校生を調査対象に含め、中学1年生から高校3年生までの生徒、計1074名(男子465名、女子609名)を対象にして、青少年の生活不安を客観的に測定できる尺度の開発および標準化作業を行った。主因子法・プロマックス回転による因子分析を繰り返し行った結果、最終的に、「予期不安」、「評価不安」、「学校不適応」という3つの下位尺度、各6項目ずつ、計18項目から成る「中高生用生活不安尺度(LASS)」が開発された。なお、本尺度には、一定の信頼性、妥当性が備わっていることが確認された。 次に、その尺度を用いて分散分析を行ったところ、生活不安は女子の方が男子よりも有意に高いこと、学年が上がるにつれて生活不安は高まることが明らかになった。また、カイ二乗検定の結果、生活不安水準が高い群ほど、「うつ傾向」および「希死念慮傾向」の強い生徒の割合が有意に高いことがわかった。このことから、本尺度は、生活不安の高い生徒の発見だけでなく、自殺リスクの高い生徒の発見にも役立つ尺度であると考えられる。 さらに、青少年における生活不安と攻撃性との関連性について、、「日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(BAQ)」を用いて、分散分析によって検討したところ、一般に青少年の場合、生活不安が高まれば高まるほど、攻撃性傾向も高まることが確認された。さらに詳細に両者の関連性について検討するために、LASSの各下位尺度得点および全体得点を目的変数、BAQの各下位尺度得点を説明変数として男女別に重回帰分析を行ったところ、男女とも、攻撃性のうち「敵意」が、特に生活不安と密接に関連していることがわかった。このことは、誰かに対して敵意を示している生徒ほど、何らかの生活不安をより強く感じている可能性の高いことを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我が国における生活不安と攻撃行動に関する調査については順調に終了し、現在、「生活不安尺度」の標準化作業および調査対象者を拡げる形で結果の安定性の最終検討を行っているところである。また、その生活不安と攻撃行動との関連性についても、各種多変量解析の手法を用いて詳細な検討を行い、分析結果については、現在、学術誌に投稿すべく論文にまとめている段階である。一方、本研究においては、北欧諸国における青少年をも対象に同様の調査を行うことを予定しているが、生徒の人権問題等から生徒に対して調査を実施することに対して抵抗感が強く、思うように調査票が回収されていない状況であり、調査分析自体がやや遅れている。しかし、何とか予定枚数を回収すべく現在鋭意努力しているところである。各国からの調査票が回収でき次第、データ分析に取りかかる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本研究において開発された「中高生用生活不安尺度」を学校現場で実施できるように、さらに信頼性、妥当性の検討を含めた標準化作業を行い、その結果を論文にまとめ、平成26年度中に学術誌に投稿することを目指している。また、北欧諸国における青少年の生活不安と攻撃行動に関する調査票を夏休みに入る6月までにはすべて回収する予定である。ただ日本と同じような質問内容では調査に協力できない学校もあるので、各学校と協議して、調査項目としてふさわしくないと判断した項目については各学校において削除して調査実施して構わない旨、伝えて、調査の協力を求めた。従って、調査分析に当たっては、各学校において削除した項目をすべて除いた形で国際比較を行うことにした。そして、北欧諸国と日本の学校において実施した調査によって集められたデータに基づき、生活不安と攻撃行動との関連性について国際比較データ分析を行う。さらに、そのデータ分析結果をまとめて、最終報告書に記載するとともに、学会発表や論文投稿を行い、研究結果を内外に広く発信していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度中に、児童生徒の生活不安と攻撃行動に関する国際調査を完了し、研究成果をまとめ、発表する予定であった。しかし、児童生徒の人権への配慮等の問題から、思うように調査用紙の回収が進まなかったため、まだ国際調査のデータ入力、分析および研究成果のまとめができていない状況である。従って、25年度中に国際調査に係る研究成果発表を行うことができなかったため、未使用額が発生した。 北欧諸国からの調査票回収が当初の予定より遅れていることから、計画を変更し、次年度において、国際調査データの解析と、その研究成果を広く社会に還元することを目的とした学会参加および研究成果発表を行うことにし、未使用額は、その経費に充てることにした。
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