パニック障害は年間有病率約2%の多頻度疾患であり深刻な機能障害やQOLの低下を伴う場合もあり適切な治療が必要であるが、重要なアウトカムであるQOLの認知行動療法施行後の変化に関する研究はほとんどない。そこで本研究ではパニック障害に対する認知行動療法施行後のQOLの変化を予測する因子について検討していくこととした。 平成23年度および24年度は以下のような介入および評価を施行した。1. 介入 3人ずつのグループによる認知行動療法を1回約2時間×10回施行。プログラムは以下の5項目からなる。(1)パニック障害に対する心理教育(2)呼吸コントロール(3)不安を惹起する認知を是正するための認知再構成(4)段階的実体験曝露(5)身体感覚曝露。2. 評価 診断を確定し併存疾患を確認するために、Structured Clinical Interview for DSM-IVという半構造化面接を治療前に施行した。また、パニック障害の重症度を評価するため治療前後でPanic Disorder Severity Scale(PDSS)を施行した。また人格特性を評価するため治療前にNEO Five-Factor Index(NEO-FFI)を施行した。QOLを評価するため、治療前後および3か月後、12か月後に12-item Short-Form Health Survey (SF-12)を施行した。 平成25年度は得られたデータを解析。PDSSおよびNEO-FFIの各下位項目を独立変数としSF-12の各下位項目を従属変数として重回帰分析を行った。結果として治療前のパニック発作の頻度と身体感覚に対する恐怖感が治療後および12か月後のQOLの有意な予測因子である可能性が示唆された。これらの成果は論文化されCognitive therapy and research誌に投稿された。
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