研究課題
我々は前年度までに短期睡眠行動療法(bBTi)が、うつ病不眠患者の不眠・うつ両方に有効なことを大学病院における無作為割付対象試験(RCT)で実証した。本研究では、一般臨床現場でbBTi治療者育成の教育システムを構築し、さらに大規模・長期RCTを実施する。これにより一般臨床現場でのbBTiの実施可能性・有効性を明らかにし、さらにわが国の精神療法普及教育システム作りの問題点を抽出し、医療施策への提言を行う。【平成23年度研究成果】短期睡眠行動療法(bBTi)教育ワークショップを名古屋で開催し,参加者の睡眠・うつ・睡眠行動療法に関する知識を前後調査することで教育効果を測定した。さらに次年度以降のRCTにも参加することを表明した6人の治療者については、不眠患者を対象に実際にbBTiを録音して施行してもらい、研究者らが録音を聞いて指導を行うスーパービジョンを開始した.○ bBTi教育ワークショップ: 精神科標榜治療機関でうつ病患者治療に2年以上従事している,医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士の約20人を対象に,12月3日・4日の連続2日、1日7時間のワークショップを休日を利用して開催した.不眠・うつ病の概要・評価方法、bBTi治療要素の講義とロールプレイによる演習を行い,初日の最初と2日目の最後に教育効果の評価を行った.○ bBTiスーパービジョン: ワークショップ参加者で、次年度以降のRCT参加条件を満たし、かつ希望した6名を対象に,個人情報保護に十分注意しながらスーパービジョンを行えるようなシステムを開発し,実際のスーパービジョンを開始した.スーパービジョンではチェックリストで達成度を測定し,効率的教育のためのデータを習得中である.
3: やや遅れている
当初の計画では,短期睡眠行動療法(bBTi)教育ワークショップ開催によって,精神科標榜治療機関で年間実人数20例以上のうつ病患者治療に2年以上従事している,医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士で効果研究に参加できるものを,少なくても24人集める予定であった.しかし東北大震災等の時期的な問題から,ワークショップ参加者が20人程度,効果研究に参加できる者が6名のみであったため,今後の効果研究におけるサンプルサイズを確保するためには,まだ治療者育成が中途の段階であると言わざるを得ない.また効果研究では,UMINの研究支援システムであるINDICEを利用して無作為割り付けやデータ管理を行う予定で早期から申請していたが,INDICE自体が新規受付を中止している事態となっている.そのためINDICEの管理者に連絡をして再開を依頼しているが,時期についても明瞭な回答が得られていない.
国立精神神経医療研究センター内の認知行動療法センター長である大野 裕 氏に協力を仰ぎ,効率よく効果研究に参加できる者を確保するために,東京で第2回ワークショップを開催することとした.5月14日・15日の両日で行う予定であるが,今のところ応募者数も順調に伸びている.昨年開催の第1回ワークショップ参加者に関しては,共同研究者の協力を得ながらスーパービジョンを行ってデータをまとめている.効果研究の研究システム作りに関しては,上記のUMIN-INDICE以外のシステムを利用・構築する可能性について,模索している.
24人の効果研究参加者を得て,参加者が勤務する医療施設に通院中の110人の薬物療法で寛解しないうつ病不眠患者を対象に、通常治療にbBTiを加えた介入群と、通常治療に睡眠衛生教育のみ加えた対照群に無作為割り付けして,効果研究を行う.評価は,不眠・うつの両症状やQOLを24週間評価し,一般臨床現場でのbBTi有効性を検討する。効果研究では,研究を円滑に進めるために人的なサポートが必要であり,また割り付けシステム・データ管理システムの作成・維持管理が必要である.また真に臨床で薬に立つ研究のためには,わが国だけでなく世界のこの分野における研究動向を得るため,海外の学会参加や研究者との交流が必要である.さらに,研究成果を広くわが国の臨床に膾炙するためには,論文化して発表したり,学会等で報告することでその成果の解釈に研鑽を積む必要がある.次年度は,これらのために研究費を使用する.
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
J Clin Psychiatry
巻: 72 ページ: 1651-1658
Cochrane Database Syst Rev
巻: 12 ページ: CD006528
Evid Based Ment Health
巻: 14 ページ: 21
http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=11512