研究課題/領域番号 |
23530913
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
冨家 直明 北海道医療大学, 心理科学部, 教授 (50336286)
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研究分担者 |
小川 豊太(濱口豊太) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80296186)
田山 淳 長崎大学, 保健・医療推進センター, 准教授 (10468324)
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キーワード | コミュニケーションスキル / ソーシャルキャピタル / 行動活性化 / 中1ギャップ / 高1クライシス / 学校間接続 |
研究概要 |
今日の教育界では、いじめ・不登校の予防と解決に資するコミュニケーション教育に関心が集まっている。中でも広大な地域性を有する北海道では地域間格差が生じない配慮をしたコミュニケーション教育の実践が期待される。研究の第1段階では、層別二段抽出サンプリング法を用いて抽出された道内の高校生2000名を対象としたコミュニケーションスキルとソーシャルキャピタル、行動活性化、抑うつの関連を調査し、SEMモデルの構築に成功した。コミュニケーションスキルとソーシャルキャピタル、行動活性度はいずれも抑うつ感を軽減する作用を持っていた。また、研究の第2段階では、調査対象を小中学校に拡大し、「アセス」を用いて学校適応感とコミュニケーション力の関連を調査した。コミュニケーションスキルの力が学校適応感に及ぼす影響が小中学校で明らかとなった。次に、研究の第3段階として、小中高に一貫したコミュニケーション力を測定する新しい社会的スキル尺度を北海道教育委員会と共同開発した。道内全域を代表する小中高すべての指導主事により、教師が学校で観察可能な12領域のコミュニケーションスキルを測定でき、なおかつ小学校低学年から高校3年まで一貫性を持った尺度である。この尺度は専用の集計ソフトと活用に向けた手引き書がセットになっており、北海道内のすべての公立小中学校で利用が可能になった。研究の最終段階である、第4段階では本尺度の実践的な活用による教育効果の検証を行う。コミュニケーション力をテーマにした映画制作を導入した試験的な介入では高校生の中退者数の減少、進路意欲の向上などの効果が観察された。各地域、学校の特色に合わせたコミュニケーションスキル教育の実現とその効果の検証を取りまとめることを最終的な本研究の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展している。本研究が作成するコミュニケーションスキル測定尺度を活用したコミュニケーション教育への関心が北海道内の教育界において極めて高く、積極的に取り組むべき事業として位置づけてくれていることから、小中高全段階における全測定尺度の完成、集計ソフトの開発、普及のための全道協議会の開催など極めて順調に推移するとともに、当初の計画より前倒しですでに本尺度を活用して教育実践を行っている地域、学校が多い。よって本研究の計画は当初の予定より先行しつつあるといえ、学術的な完成のみならず、地域への定着・還元という最終目的地へ十分に到達できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度にあたり、教育プログラムの効果検証とその持続的発展のための社会制度設計、並びに学術的公表、並びに研究成果の地域における定着・還元を遂行することが主な目標となる。作成された尺度の妥当性や信頼性に関する細かい学術的検証やわかりやすさや使いやすさというユーザーフレンドリー性を高める工夫も行っていく予定である。学術公表としては、教育心理学会第55回大会、日本カウンセリング学会第46回大会、The 4th Asian Cognitive Behavioral Therapy Conference、The 22nd World Congress on Psychosomatic Medicineで随時発表予定であり、この他、学術雑誌への投稿論文は査読審査中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、学術公表に関する出張旅費、データの収集と解析に関するパソコンやソフトウエア、行動観察データに関する分析用カメラとその関連消耗品、尺度及びそのプログラムの制作と公開に要する委託費用、関連する業務における補助員の雇用費用に充当する。
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