研究課題/領域番号 |
23530915
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
西浦 和樹 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40331863)
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研究分担者 |
田山 淳 長崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10468324)
沖林 洋平 山口大学, 教育学部, 准教授 (20403595)
池田 和浩 尚絅学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40560587)
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キーワード | 創造性 / コミュニケーション / ストレス軽減 / ブレインストーミング / ストーリー・メイキング・グループ / PTSD / 教育ツール / 問題解決 |
研究概要 |
本研究は、創造的問題解決における心理メカニズム解明を目的として研究を実施した。本ツールの思想は、アイデア創出に関わるアブダクションを基本原理とし、ブレインストーミング法を代表とする集団的思考の方法を気軽に体験し、学習することのできるカードゲームにプログラミングすることにあった。本ツールを使用することで、仮説的推論中のストレス反応と認知的対処方略のメカニズム解明に重要な手がかりを発見した。 ●研究の具体的内容:本年度は、本カードゲームの基本原理となる4つのルールを集団思考法あるいは集団心理療法に適用するための活動を行った。具体的には、国際力動的心理療法研究会第18回年次大会を宮城学院女子大学において開催し、災害臨床プログラム(Disaster Clinical Program; DCP)として、東日本大震災による心的外傷の予防・治療のための心理的支援を行った(2012年9月1日(土)―3日(月))。その中で、市民参加型のワークショップ「アゴラ」の一つとして、ストーリー・メイキング・グループ(Story Making Group; SMG)「震災を体験した自分の物語を紡ぎ、他者の物語と出会う」を実施した。このSMGは、体験・記憶・傷つきを自分一人では触れられずに心の中に抱え込むしかなくなっている人たちの心の働きを取り戻すことを目的としている。 ●研究の意義:本研究の最大の特色は、東日本大震災の災害臨床プログラムの一つとしてSMGを連携開発し、ブレインストーミング法による心的外傷の予防・治療のための心理的支援を行ったことが意義深い。 ●研究の重要性:本研究で用いた集団思考ツールは、独創性が高く、創造的問題解決の基本原理を臨床応用した手法である。このようにして開発されたSMGは、発散的思考と収束的思考を含む集団思考のための新たな発想支援ツールとしての可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的は、科研費(H21-H22)「カードゲーム方式ブレインストーミング法によるストレス軽減効果による研究(研究代表者:西浦)」の研究実績に基づくものであり、アイデアプラント開発チームと日本語教育専門家チームの協力を得て、研究開発を行うことで達成される。この点に関して、本研究チームは、ビジネス向けのブレインストーミング促進用カードゲームの開発経験と心理データの測定経験を活用し、ツールの設計と制作に関してフィードバックをかけ、共同研究を継続的に推進するための各自の役割とスケジュールの確認を早い段階で達成することができた。 平成24年度は、カードゲーム検証実験として取得したデータの分析から得られた知見を東日本大震災における災害臨床プログラムとして臨床応用を試みた。具体的には、集団心理療法を可能にするSMGの開発に携わり、日常生活では心の中に抱え込むしかなくなっている人たちの心の働きを取り戻す集団思考のツール開発を行った。このツール開発では、ツールの臨床応用に注力したため、客観的な心理的効果測定を実施できなかった。 つまり、現段階では、平成24年度の年間計画として掲げていた事項を概ね達成できた。思考ツール開発における科学的データの蓄積に留まらず、臨床応用の可能性を探ることができたという点で、一定の成果を収めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の初年度の計画では、カードゲームの設計と製作、スケジュールの確認、カードゲーム検証実験及びその効果測定、研究の中間報告を実施することとした。また平成24年度の研究計画では、カードゲーム検証実験から災害臨床プログラムへの臨床応用を試み、集団心理療法を可能にするSMGの開発に携わった。本計画の進捗状況は、概ね達成できたことを確認した。 平成25年度の年間計画は、平成23年度から平成24年度にかけて実施した研究成果の概要を取りまとめ、心理系の学会において報告することが中心となる。具体的には、過去の研究課題を早急に取りまとめ、研究分担者間で、研究スケジュールを確認することである。 次に、平成24年度の研究を継続し、SMG開発とその効果検証を行うことが考えられる。さらにブレインストーミング中の脳内メカニズムを明らかにすることで、アイデア創出を阻害する原因を追究することができる。このようなブレインストーミング中の生体情報解析のためには、脳波の周波数解析や脳波マッピングを行うための装置が必要になる。比較的早い段階で、それを実現可能な段階に到達するように、研究環境の整備を推進する。 これらの研究成果の一部は、国内外の心理学会において成果報告する予定があり、継続して、ブレインストーミング中の創造的思考メカニズム解明を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年3月に発生した東日本大震災の影響を受けて、平成23年度と平成24年度において当初予定していた物品の購入と学会活動を控え、当時の状況でできる範囲の研究活動を行った。これによって、研究経費として申請していた物品費(分析用PCとソフトウェア)と旅費(研究成果の中間報告)に関して、平成25年度に250,910円を繰り越すこととした。
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