本研究は、性犯罪被害者が被害を公的機関や家族・友人に訴えることを妨げる重要な要因として被害者非難の問題を扱い、被害者非難をもたらす心理的要因を明らかにすることを目的とした。また、その解明の結果、被害者支援が進むための条件整備の検討を行うことを目的とした。 平成23年度では被害者のライフスタイルや第三者の女性の性に対する誤解や性役割観についての調査を実施した。 2年目の24年度は、それらの結果分析を行うと同時に成果の公表に努めてきた。加えて、被害者非難と拮抗する条件として第三者の共感に関する調査を行った。 3年目の25年度ではまず、前記被害者のライフスタイルと被害者非難の関係を論文として公表し(『社会心理学研究』)、同時に、性役割観が女性の性に対する誤解を生み、それが被害者非難をもたらすというモデルを裏付ける調査結果を得、それを論文化した(『犯罪心理学研究』)。 こうした成果の論文化と並行して、第三者の共感的態度と被害者非難や被害の甚大さの評価、また二段階モデルとして提案した、事態への被害者の対処可能性についての第三者の態度と被害者非難の関係を検討する調査をおこなった。その第一の調査では、共感度が高いと間接的に被害者非難が弱まるという結果であった。しかし、共感性が高いと被害は大きく判断することは確認された。一方、対処可能性については性差があった。抵抗が不十分であったという評価の男子は被害を小さく判断したが、女子ではそれが確認できなかった。被害者非難については、抵抗できたはずという第三者は男女とも非難が大きくなっていた。したがって、抵抗可能性を介した二段階モデルは一部顕彰されたともいえる。これについては現在論文投稿中である。
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