本研究は性犯罪被害者が被害を公的機関や家族・友人に訴えることを妨げる要因として被害者非難の問題を取り上げ、それに影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的としている。 平成23年度、24年度25年度では被害者のライフスタイルや第三者の性役割観の影響、第三者の共感性について検討し、成果を論文化してきた。最終年度である26年度では、共感の役割をさらに検討し、成果を論文として公表した(駿河台大学論叢)。具体的には友人の部屋で花火観賞を愉しんでいるうちに、友人から意に沿わない性行為を強制された被害者に対する態度を大学生を対象に調査した。その結果、細部では男女間で差がみられるが、共感性は男子回答者、女子回答者ともに、被害者非難には直接関連せず、レイプ神話受容度を介して被害者非難に関わることが示された。次に、同じシナリオを用いて共感の尺度を変えて検討した結果、女子回答者では他者視点が被害の予測可能性や対処可能性の評価と関係することが示された。 これらを受けて、加害者が未知の他人の事例と友人の事例を取り上げ、加害者ー被害者関係を要因として、第三者の性役割観、女性の性的願望に対する誤解、共感性の影響を検討する調査を行った。その際、調査回答者には、従来の研究が扱ってきた大学生ではなく一般市民を用いた。回答者は約600名の成人男女であり、二つのシナリオを順序未知ー友人、友人-未知と、それぞれ異なる順序で提示される条件で回答した。 本結果は現在分析中であり、27年度中に学会発表し、可能であれば論文として公表する予定である。 以上4年間の研究成果を今後は纏めてゆく予定である。
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