研究課題/領域番号 |
23530917
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
桜井 美加 淑徳大学, 社会福祉学部, 准教授 (00406638)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 暴力予防 / 中学生 / ウエルビーング |
研究概要 |
中学生に適切でかつ日米で比較検討を行うことが可能な中学生版心理社会的ウエルビーング尺度作成に向けて、文献研究を行い、以下のことが明らかになった。第一に、Ryan,et al.(2000)の自己決定理論をベースとした研究により、子どもが建設的な社会的発達と個人的なウエルビーングを経験するためには、能力、関係性、自律性の3つが必要であるが、他者との良好な関係性は子どもの学級内の規則を守るなどのモチベーションを高めることがわかった。この研究により、怒りのコントロールスキルを習得する準備段階として関係性を育てることの重要性が示されたことは、本研究における理論的構築のベースとなる。第二に、中学生の関係性を測定するにあたり、従来の研究によく見られていた友人関係や家族関係にとどまらず、Liang,et al.(2010)が示す3つの分類(友人関係、信頼できる第三者の大人であるメンター、学校内外を含めたコミュニティ活動へのコミットメント)について明らかにすることで、社会の中で誰がどのように中学生への関係性を築く上で重要な人となりうるかというデータを示すことができることが示唆された。第三に、中学生の心理社会的ウエルビーングを測定する尺度については、Ryff(1989)の尺度を参照して作成することにした。この尺度は、人格的成長、人生における目的、自律性、環境制御力、自己受容、積極的な他者関係の6つの要因からなる。大学生以上の成人が対象とされた研究が数多くみられるが、中学生は大人への成長途上において、これらの6つの要因がどの程度達成されていると「幸福である」と感じるのかについてみていく上で有用であると判断した。これらアメリカの大学との協力を仰ぎつつフィールド確保などの準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中学生の心理社会的ウエルビーングの定義をめぐり、従来の先行研究で行われていた生活満足度やポジティブ感情の量を測定する方法は、中学生本人の片寄った価値観に基づく自己満足的な自己評価になってしまうことが危惧され、なにをもって心理社会的ウエルビーングを測定するのか試行錯誤した。しかし幅広い文献研究やこの研究領域の研究者とのディスカッションを重ねることで、「中学生にとって発達的に社会的に望ましい心理社会的ウエルビーング」を想定し、その程度を測定すること、また尺度は協力先のアメリカでもなじみがあり協力を得られやすいものにするという結論にいたった。以上が、研究が当初想定していたよりも遅れた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、アメリカの大学の協力を得ながら、現地の中学校に質問紙調査を実施する。また日本の中学校においても同様の質問紙調査を行う予定である。質問紙は、既成のものを参考にし使用することにする。本研究は、尺度の精度そのものを問うよりは、心理社会的ウエルビーングと怒りのコントロールの関連性やその分析、解釈を文化要因も交えながら重点的に行っていくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、アメリカの中学校で質問紙調査を行うために、打合せや準備のための渡米1回、また質問紙を実際に配付したり、教員を対象としたインタビュー調査を行うために1回、計2回海外出張を行う。そのために渡航費、宿泊代が必要である。質問紙作成やデータ入力、解析は、学生に手伝ってもらうため、謝金が必要となる。さらに、研究の成果を発表するために学会へ参加するための旅費が必要となる。
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