研究課題/領域番号 |
23530917
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
桜井 美加 国士舘大学, 文学部, 准教授 (00406638)
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キーワード | 暴力予防 / 中学生 / 心理的ウェルビーング / 怒りのコントロール / 心理教育 |
研究概要 |
本年度は、中学生の怒りのコントロールへの有効な心理的アプローチを明らかにするために、アメリカにおいてカウンセラーにインタビュー調査を行った。その結果、中学生を地域のスポーツチームなどに参加させることで、ルールにのっとった形で攻撃性を発散させたり、メンターのリファーをカウンセラーが行うことで、中学生がメンターと一緒にアクティビティに参加することにより、ロールモデルとなる大人との信頼関係を培い、人とのつながりを通して心の支えを得ることで、怒りのコントロールが容易になることがわかった。 アメリカのボストンカレッジの心理学者と、インタビュー調査の結果を踏まえながら、中学校現場で活用できる心理的介入についてディスカッションを行った。その結果、学校にメンターを派遣することで、中学生の情緒的安定感を図ることが有効であること、また心理教育プログラムは怒りのコントロールスキルのみを強調するのではなく、人間関係形成を重視し、楽しく人とかかわることを促進するような内容を組み込むことが重要であることが明らかになった。文献研究においては、アメリカで開発された「学校生活における関係性攻撃への介入プログラム」を日本語訳し、その一部を共著「世界の学校予防教育」で紹介した。またそのプログラムを日本の公立中学校で実施可能なものに改変した。ただ今東京都公立中学校の校長の協力を得て、怒りのコントロール心理教育プログラム開発に向けて準備中である。 アメリカの心理学者によって開発された、友だち、メンター、地域におけるアクティビティとのかかわりにおける人間関係形成能力について測定できる質問紙"Relational Helath Indices"の日本語訳を著者から許可され、その質問紙を作成した。また中学生を対象とした心理社会的ウェルビィーングの質問紙作成を行い、日本の公立中学校での質問紙調査に向けて準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカに3回渡米し、文献研究、心理学者からの情報収集、インタビュー調査を行うことができ、本研究の目的の一部が達成された。また日本の公立中学校でフィールドワークが可能になったことにより、日本における質問紙調査およびメンター派遣や心理教育プログラム実施の準備が進んだ。さらに、アメリカの心理学者が開発した質問紙の日本語訳や心理教育プログラムの日本語訳の許可を著作者から得ることができたことで、質問紙の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
日本の公立中学校で、学校校長と何度か面談を行い、メンターの派遣および担任教諭による怒りのコントロール心理教育プログラムを実施(年8回から10回予定)し、その効果測定を行うことが予定されている。すでに4月の時点で、ベースライン測定のための質問紙調査を実施している。質問紙調査は、怒り反応、怒りのコントロールスキルの知識を問う質問項目、人間関係能力(友だち、メンター、地域などによる活動を通した人間関係)、心理的ウエルビーング(自律、能力、関係性)を問う質問項目を含んだものである。、怒りのコントロールを容易にするための、人間関係形成能力や心理的ウエルビーング形成が重要であることが予測されるため、それらの仮説をデータで示し、検証することが、今後の本研究の推進方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
費目別収支状況等「次年度使用額」において、繰り越しが大きかったのは、予定していた海外での学会参加、発表ができなかったためである。 平成25年度においては、物品として、質問紙調査、学術国際誌への投稿のために文具、印刷用のインク代、USBメモリーなどの購入が必要である。交通費としては、海外、国内の学会への参加、発表するために航空費、滞在費が必要である。さらに、資料収集のための、コピー代、図書費が必要である。
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