研究課題/領域番号 |
23530921
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
木部 則雄 白百合女子大学, 文学部, 教授 (10338569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レジリエンス / 発達障害 / 対人関係 / 多角的アセスメント / 治療的介入 / 社会復帰 |
研究概要 |
今年度は研究代表者が携わっている医療機関のデイケア施設で社会復帰プログラムに参加している対象者を中心に心理アセスメントと継続的な治療的介入を行っている。社会復帰プログラムはソーシャルワーカーや臨床心理士の増員により拡充し、対象者も昨年度初めの5名程度から、昨年度末には10数名に増えた。対象者は全て成人で様々な精神疾患を抱えて失業や引きこもりの状態にあるが、インテークやその後の継続的な診察から、多くのケースで生育環境のみならず発達障害的な傾向も社会不適応に関連している可能性が考えられている。対象者のパーソナリティ、対人関係、認知機能的特徴を理解するために、昨年度末より心理検査や知能検査を実施している。また、検査結果は自己理解や今後の方向性を検討するために対象者にフィードバックを行い、情報を社会復帰プログラムのスタッフとも共有することで、より対象者の特徴に合ったサポートにつないでいる。また、社会復帰プログラムの活動では日常生活に必要な作業や社会生活で求められる対人コミュニケーションを個人のペースで身につけられるよう進めている。そうした活動における状況や社会復帰への進捗状況は、月一回のソーシャルワーカーの個別面接と研究代表者が行う定期的な診察で対象者と確認をし、対象者の自己理解や社会復帰の方向性を検討することにつなげている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現段階の研究では、上記で述べた医療関連機関のデイケア施設において、社会復帰プログラムの参加者に心理検査を実施し、縦断的な観察と治療的介入を行っている。心理検査はパーソナリティ特性を理解するロールシャッハ検査、認知機能特性を理解し、発達障害的な側面を検討するWAIS-III知能検査、パーソナリティを自己概念や環境との関わりという視点で視覚的に理解するバウム検査を中心に行っている。さらに、集団場面における他者との関わりや実際の作業という点では、月一回のソーシャルワーカーの個別面と研究代表者(精神科医)の診察によって、状況と変化の確認を継続して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 今後は社会復帰プログラムの参加者への心理検査結果をまとめ、全体の傾向や個別の特徴を分析する。また、対象者に関して縦断的に実施してきた観察と治療的介入から変化の有無やそれに関連した要素を見い出していく。2. 上記分析結果から、社会不適応につながった環境要因と個人の発達上の問題を検討すると共に、集団活動の活動の中での変化や成長も取り上げ、レジリエンスに関連する可能性のある要素を供出する。そうした要素に関して先行研究を踏まえて精査し、レジリエンス質問紙を作成する。レジリエンス質問紙は発達障害の疑いのある成人で相談機関(現時点では白百合女子大学の発達臨床センターで実施された発達障害の予後調査研究(柳井2010)の協力者を検討中)に通所歴のある人を対象に予備調査を行い、修正を加えて作成する。レジリエンス尺度だけでなく被援助志向性尺度、居場所感尺度などを白百合女子大学発達臨床センターの利用者と医療機関のデイケア施設の参加者に実施し、比較検討を行う。さらに、対象者の中から協力者を募り、インタビュー調査を実施する。3. レジリエンスに関連する環境要因を理解するために、センター利用者の母親からも協力者を募り、レジリエンス尺度、母親と父親の関係性に関する尺度を実施する。そのような結果分析から、レジリエンスと環境要因の関連を検討し、社会不適応の状況にある人たちへの支援ガイドラインを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は調査研究におけるデータ収集と分析にかかる費用が主となる。まず、心理検査の分析には、その精度を保つために専門家による指導が必須とされる。レジリエンス質問紙の実施では、作成のための予備調査、本調査のデータ入力に大学院生のアルバイトによる作業料など人件費がかかり、インタビュー調査では協力者への謝礼が必要である。
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