研究課題/領域番号 |
23530922
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
向井 隆代 聖心女子大学, 文学部, 教授 (00282252)
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研究分担者 |
佐伯 素子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (80383454)
齊藤 千鶴 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (20407597)
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キーワード | 施設入所児童 / 可塑性 / 縦断的研究 / 心理社会的発達 / 適応 |
研究概要 |
児童養護施設に入所している児童の心理社会的発達の様相をとらえ、適応を支える要因を明らかにすることが本研究の目的である。幼児期から調査を継続中の養護施設入所児童を対象に個別面接調査と行動観察を行い、また職員への質問紙調査と面接調査により、児童の行動特徴、自己効力感、感情理解、自己制御機能、家族イメージ、対人関係の枠組等の発達的変化を継続的調査している。 平成25年度も各協力施設を訪問し、これまでの調査の中間結果を報告し、引き続きの協力同意を得たうえで、入所児童と職員を対象とするデータ収集を実施した。児童の成長に伴い、児童対象の質問紙調査の可能性も検討し、同意が得られた小学校高学年の児童には試験的に実施した。職員には児童の問題行動やライフイベント、学校や施設内での全般的適応について聞き取り調査を行った。 これまでの分析より、入所児童の対人関係の枠組の発達の仕方は家庭で養育されている児童とは異なり、一匹狼タイプは少ないものの重要他者が定まらない児童の割合が多いことがわかってきている。これは、投影法を用いた家族イメージの検討結果とも照らし合わせ、入所児童の間では甘え行動を抑制する傾向がある可能性も考えられる。また、重要他者が定まらない児童に比べて、1人ないし限られた複数の重要他者が存在する児童のほうが仲間からの受容感が高く、抑うつや不安など内在化された問題行動が少ない傾向にあった。 一部の変数に関しては幼児期の経験との関連についての分析も進めており、たとえば虐待経験が確認されている児童はそうでない児童に比べて語彙力の発達に遅れがみられるほか、攻撃性や衝動性など外在化された問題行動も多く認められることがわかった。 これらの調査結果の一部は、国内外の学会で発表した。今後もデータ収集を継続し、幼児期から児童期までの変数による縦断的な分析を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
児童を対象とする個別面接調査と行動観察、職員を対象とする質問紙調査と面接調査に関してはおおむね順調に進行している。小学校高学年となった児童を対象とする質問紙調査も予備調査の段階には到達している。しかし、これまでに実施した分析のほとんどは横断的なものであり、幼児期から児童期までに得られた結果を統合して縦断的な分析については、事例検討を行ってはいるものの、統計的な分析はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
幼児期から児童期までのデータがそろっている児童を対象として、質的な分析も含めた縦断的分析を行うことを最優先課題とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者、研究分担者は2月に複数の調査協力施設を訪問する予定であったが、大雪警報のため延期となり、出張に関する旅費が未使用である。また、基礎的情報のデータベース化が初年度とその翌年度に概ね終了したため、当該年度は研究補助者の雇い入れが少なかった。 質問紙調査、面接調査およびこれまでの研究結果の報告のため、すべての協力施設への訪問を1年間に2回以上予定している。また、研究開始年度に購入したノートブックパソコンの保守のための経費、追加の統計ソフト等の予算も計上している。さらに、論文執筆のための参考資料の購入も予定している。
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