研究課題/領域番号 |
23530931
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岡本 茂樹 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50412755)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロールレタリング / 受刑者 / 教育プログラム |
研究概要 |
2011年度は,熊本刑務所において,「被害者の視点を取り入れた教育」として,5名の生命犯の受刑者に対して,筆者が作成したロールレタリングを活用した「教育プログラム」を実践した。2011年度の研究は,3回目の実践であり,過去2年間の研究成果を踏まえた教育プログラムとなっている。具体的には,「加害者の視点」をテーマに犯罪を起こした自分自身の内面の問題を洞察することからグループワークなどを始め,最後は「被害者の視点」までも視野に入れた教育プログラムの内容となっている。結果として,受刑者の更生への意欲は過去2年間に比べて高まっていることが検証された。また,教育プログラムにおいて,「相手に対して本音を吐き出す」技法であるロールレタリングが自己の内面の気づきを促す点で効果をもたらしていることも明らかとなった。 また,研究の実践と並行して,研究成果の公表を行った。具体的には,2010年度に実践した研究成果を,犯罪心理や臨床心理などの学会で発表した。従来から矯正教育では「被害者の視点」から反省を促す指導方法が主流となっている。それだけに,「加害者の視点」をテーマに自分自身の内面の問題を考えさせることで,受刑者は被害者のことを考えるようになっていることを報告したところ,学会では新しい視点を持った研究成果として一定の評価を受けた。また,個別の「ノート交換」という方法を用いて,書きやすいテーマでロールレタリングを活用した点も評価された。 2011年度は,上記に述べたことを踏まえて,「加害者の視点」に加えて,「被害者の視点」まで取り入れた「教育プログラム」を作成し実践した。それによって,受刑者の更生への意欲の高まりはさらに深まったことが検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3回目の実践であるため,過去2年間の実践で明らかになった課題や問題点を参考に教育プログラムを修正し作成したことによって,「加害者の視点」から「被害者の視点」までを取り入れた「教育プログラム」を作成することができた。また,このプログラムに受刑者との個別の「ノート交換」を用いて,誰にも言えなかったことをロールレタリングの形で書いてもらうことが効果的であることも明らかとなった。その点では,本研究の「被害者の視点を取り入れた教育」が目指す「ロールレタリングを取り入れた『教育プログラム』の基本的な形はできつつあるように考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度も熊本刑務所において,5名の生命犯に対して,「被害者の視点を取り入れた教育」におけるロールレタリングを用いた「教育プログラム」を実践することになっている。すでに述べたように,本研究における「教育プログラム」の基本的な流れはできつつあるので,2011年度の実践を踏まえながら,新たな課題が出てきた場合に修正して,本教育プログラムの完成を目指したい。 いうまでもなく,本教育プログラムを受講する受刑者は毎年変わる。その点では,必ずしも2011年度に実施した方法が有効になるとは限らない。この教育プログラムが大半の受刑者に有効に活用できるためにも,2012年度の受講生に対して行う実践から明らかになった課題を精査し,より完成度の高い「ロールレタリングを取り入れた教育プログラム」の完成を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度の研究費の大半は,熊本刑務所への出張費と,犯罪心理や臨床心理などの学会での発表のための交通費ならびに参加費などにあてたい。その他に,図書や消耗品などにも使用したい。
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