研究課題/領域番号 |
23530936
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
津川 秀夫 吉備国際大学, 心理学部, 准教授 (20330623)
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キーワード | 睡眠 / 呼吸 / 不眠症 / 睡眠段階 / 治療 |
研究概要 |
研究の意義と重要性:本邦では、成人の5人に1人が不眠をかかえているとされる。不眠症の治療の中心は薬物療法であるが、服薬に不安をいだく者も少なくない。そこで本研究では、睡眠改善に向けて安全で依存性のない心理学的手法を開発することを目指している。狭義の不眠症をはじめとして不眠傾向の者に対しても、睡眠改善の具体的方策を提供できるという点で、学術的領域においても社会的領域においてもその貢献度は大きい。 研究の目的:睡眠時における呼吸の特徴について明らかにするとともに、入眠時の呼吸パターンを模倣することで睡眠に適した心理・生理的状態が喚起されるか検討する。 1年目(平成23年)の実績:各睡眠段階における呼吸パターンを明らかにすることを目的にし、健常者10名を対象にして仰臥姿勢にて脳波・眼電図・筋電図・呼吸音・呼吸波形を測定した。その結果、睡眠段階1と2においては<呼気>:<休止+吸気>が約1:3となり、覚醒時および睡眠段階3と4の呼吸パターンとは異なることが明らかになった。 2年目(平成24年)の実績:不眠傾向を有する大学生を対象にして、入眠時(睡眠段階1と2)における特有の呼吸パターンを模倣させることの効果について検討した。入眠時の呼吸パターンを模倣する前後で比較すると、実施後は有意に眠気が増すことが明らかになった。また、このプログラムの参加前よりも参加後において入眠潜時が有意に減少することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目(平成24年)に予定されていた実験は予定通り実施され、入眠時の呼吸パターンを模倣することにより、眠気が喚起されることが明らかになった。ただし、1年目の研究成果に関して論文投稿前の段階であり、2年目の研究においてもデータ分析を残している。 以上より、2年目の研究の達成度は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目(平成25年度)においては、これまでの研究成果を不眠症治療で活かすため、臨床事例の蓄積をおこない、合わせて手続きの明確化を目指す。具体的には、不眠症のクライエントへの本法を活用するなかでどのような効果および副作用があるかを検討し、CBT-I(不眠症のための認知行動療法)に何を加えていくかという実施プログラムの再編をおこなう。また、これまでの成果を論文にして公刊するとともに、地域への情報発信をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
2年目において、福島県内の精神病院の実施する震災被災者の支援プログラムの一環として1年目の研究成果を活用することを計画していた。しかし、実際には不眠症の改善に関するニーズがなく、そのかわりに病院内のストレスマネジメントの一つとして研究成果を活用することになった。そのように、研究計画の一部が縮小されたため、当該助成金が生じた。 3年目(平成25年度)においては、実験実施およびデータ入力・整理・分析のための人件費をはじめとして、統計ソフトの購入、情報収集のための旅費、リーフレットや質問紙作成のための印刷代、論文化を進めるための翻訳代などを予定している。
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