研究課題/領域番号 |
23530937
|
研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
平 伸二 福山大学, 人間文化学部, 教授 (30330731)
|
キーワード | 事象関連電位 / 虚偽検出 / 多重プローブ法 / P300 / 妨害工作 |
研究概要 |
事象関連電位による虚偽検出では,事件に関係のある裁決刺激(プローブ),事件に無関係な非裁決刺激,ボタン押しを要求される標的刺激の3刺激オッドボール課題を使用している。そして,検査方法には単一プローブ法と多重プローブ法があり,さらに,多重プローブ法には,標的刺激を複数呈示する従来法と,研究代表者が考案した標的刺激を一つ呈示する方法がある。平成23年度の研究では,従来の標的刺激6,裁決刺激6,非裁決刺激24の多重プローブ法(6:6:24)ではなく,標的刺激1,裁決刺激6,非裁決刺激24からなる新たな多重プローブ法(1:6:24)の有効性を確かめた。 平成24年度の研究では,1 : 6 : 6という同比率課題でも検討した。研究3として1 : 6 : 24と1 : 6 : 6の比率による虚偽検出を行った結果,裁決刺激と非裁決刺激の間に有意差が認められたのは1 : 6 : 24のみであり,1 : 6 : 6の同比率課題では有意差が認められなかった。但し,分析過程で加算平均回数が増加するとともに裁決と非裁決の差が減少することに気づいたため,平成25年度に研究5として予定していた加算平均回数を5回,10回,20回と操作する実験を先行実施したところ,1 : 6 : 6の同比率課題でも加算回数が5回,10回と少なければ検出率が優れることが見出された。また,研究4として視覚刺激と聴覚刺激の検出率を比較した結果,刺激の違いによる検出率の差は認められなかった。同比率課題は刺激呈示回数と検査時間を短縮できる点,聴覚課題は被検者の目への負担が軽減されることから,実務での応用に有効な刺激呈示法となることが明確となった。したがって,平成25年度に予定している妨害工作による影響をどれだけ排除できるかが,P300による虚偽検出の実務応用の実現へ重要となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施予定であった同比率課題の検討(研究3)の実施に加え,分析過程で加算平均回数が増加するとともに裁決と非裁決の差が減少することに気づいたため,平成25年度に研究5として予定していた加算平均回数を5回,10回,20回と操作する実験を先行実施したところ,1 : 6 : 6の同比率課題でも加算回数が5回,10回と少なければ検出率が優れることが見出された。また,視覚刺激と聴覚刺激の検出率を比較する研究4も予定通り実施し,視覚・聴覚のいずれのモダリティにおいても裁決と非裁決の差が認められ,刺激の違いによる検出率の差は認められないという良い結果が得られた。 研究3に関しては,日本生理心理学会での学会発表,紀要論文掲載も達成した。また,平成23年度は校務のため国際学会での発表を行えなかったが,平成24年度はイタリアでのIOP (International Organization of Psychophysiology)2012に参加して,研究4の発表を行い海外研究者との意見交換もすることができた。但し,個々の犯罪事実認識と事件全体関与の判定の可能性を検討する研究2の分析で十分な成果が得られていない点が課題であるが,ほぼ順調に進展したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
加算平均回数を少なくすることで同比率課題でも検出率が高くなったため,さらに同比率課題の有効性に関して研究を進める。特に,同比率課題を中心とした新たな多重プローブ法が,妨害工作に対してどれだけ頑健であるかを検討する。これらの成果は,第31回日本生理心理学会大会(福井大学)と50th Annual Meeting of the Society for Psychophysiological Research(Italy)で発表するとともに,国際電子ジャーナルや紀要論文として投稿する予定である。また,これらの研究成果を学会や学内研究会においてプレゼンして,当該分野の研究者との議論を重ねていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究2-6の実験遂行・統計処理,及び研究会等の実施のためにコンピュータ,プロジェクタなどの物品費,実験補助・データ整理・ホームページ管理等の人件費・謝金が必要である。また,国際学会(50th Annual Meeting of the Society for Psychophysiological Research, Florence, Italy, October 2-6, 2013)への参加・発表のために旅費,国際電子ジャーナルへの投稿のためにその他(英文校閲費)の研究費を使用する計画である。 なお,平成24年度に実施した研究5(加算平均回数を5回,10回,20回と操作する実験)において,加算平均回数を任意の回数で指定して解析するプログラムの開発にかかる謝金,及び解析に従事する人件費を想定していたが,この解析プログラムである既存のトリガ識別Pro加算ツール(Trigger Select Pro Average Tool,NoruPro Light Systems)が,無償バージョンアップで当該機能を備えたため人件費・謝金の支出が抑えられ,次年度使用額として繰り越し金が生じたものである。
|