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2012 年度 実施状況報告書

レアシンドローム児と家族への包括的・継続的な心理的支援の確立に向けての基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530938
研究機関福山大学

研究代表者

堤 俊彦  福山大学, 人間文化学部, 教授 (20259500)

キーワードレアシンドローム / プラダウイリー症候群 / FGI / 障害受容
研究概要

プラダウイリー症候群の子どもをもつ親,4人に対し,出生から幼児期・学童期に至るまでの心理的適応について質的に検討することを目的に,フォーカスグループインタビュー(FGI)を行なった。調査対象者は,PWS親の会主催の研修会に参加していた家族の中で, 4歳から7歳までのPWS児を持つ30歳代前半から40歳代前半の母親4名であった。4名の母親を対象に,約120分の半構造化面接によるFGIをおこなったが,FGIの実施は,参加者の見解が参加者間で比較的一貫して共有されることを狙いとしたためである。4人の内,1人の母親は3人子どもを持ち,その内の長女と三女がPSWという,複数の児童を持つケースであった。本研究では,子育てに関するあまり重要な情報の無い中で親は,独自のやり取りで,子どものことを理解する過程が明らかとなった。それらは,4つのカテゴリーによって示され,①「子どもとの向き合いの考え直し」,②「向き合い方の探し直し」,③ 「独自のやり方による子どもの理解」④「子どもに合った育て方がわかってくる」の過程であった。これらの中で,特に,重要だと思われるのが,「子どもとの向き合いの考え直し」であった。このことが,母親の子どもとの関係を変える転機となっていた。これは,診断や告知といった出来事そのものよりも,出来事を意味づける言葉や考えを親の仲間(ピア)と共に作って行くことが重要であることがわかった。支援者の視点としては,母親の伴走者としての役割が求められると共に,母親たちが体験を共有し,支え合おうとする気持ちをつなぐことをサポートする役割が求められていることがわかった。ピアによるサポート,支援者としては伴走者の視点,がキーワードとして抽出された事は,今後の実際の臨床の場に活用する視点として極めて有用性の高いものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は,レアシンドローム児とその家族の,心理的援助のニーズとその方向性を検証するための基礎的資料を得ることにある。レアシンドロームを有する児童の発達のプロセスを明らかにするためには,親の視座からとらえその意味に注目することが不可欠である。そこで,質的帰納的デザインを用いて,親を対象に半構造化フォーカスグループインタビューを行い,年齢とともに病像が変化する特性を捉えることにより,小児期から成人期にかけての変化のプロセスを知る。さらに,本研究の究極の目標として,レアシンドローム児と家族への包括的・継続的な心理的支援の確立である。本研究は,その第一歩として基礎的なデータの収集にあたるが,当初に計画した(1)研究パラダイムの設定,(2)レアシンドローム家族の会との関係づくり,(3)フォーカスグループインタビューの実施,そして,これらをまとめて,レアシンドローム児支援のための基礎データを収集する手順をふむ。この手順は,プラダウイリー症候群(PSW)に関しては,順調に進んでいる。これまで,親の会やキャンプへの参加,全国大会等,支援者として親の会への関わりを深めてきたおかげで,今後も引き続き研究が可能となるフィールドができた。しかしながら,PWS関連の研究に多大なエネルギーが必要となり,他のレアシンドロームの親の会とのつながりを積極的に作っていることが多少滞っている。スミスマゲニス症候群(SMS)とアンジェルマン症候群で,PWSを加えて,3つの症候群を包括的にとらえることによって,社会認知におけるインパクトを高めることが本研究の狙いでもある。今年度は最終年度であるが,スミスマゲニス症候群とアンジェルマン症候群のデータ取りへとエネルギーをシフトしていく必要がある。

今後の研究の推進方策

レアシンドローム症候群における支援においては,親の会の会員による情報交換が唯一の社会支援という現状にある。こうした現状において,親か家族が日々の生活で経験している体系的なデータを集めることは,レアシンドロームの専門的かつ包括的な支援法に近づく,大きな第一歩である。また,国内だけではなく,国外に与えるインパクトも大きいと予測される。今年度は,さらなる,質的なデータを,PWS以外の症候群に対して,収集する為に積極的に研究計画を立てた。インタビューは可能であれば大学の施設で行うが,多くの場合,家族の会が集まる場へ出向いて行ってデータ取りをすることになる。特にスミスマゲニス症候群とアンジェルマン症候群のデータ取りを急いで行なう必要がある。一方,今年度は,最終年度にあたり,研究の成果をまとめる年でもある。これまでのPWSの家族を対象としたデータを整理し,これらは,日本子ども健康科学学会などの学会を発表する候補として選び,学会に参加し,他の研究者からのレスポンスを考慮しつつ,今後の方向性をまとめていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額(B-A)が発生している理由には,スミスマゲニス症候群とアンジェルマン症候群に関するデータ取りが多少遅延しているため,これらの症候群に関する専門的な知見を得るための専門家の分析を協力を要請する際の謝金,さらにはデータ分析やデータ処理のための研究協力者への謝金に関する費用が未使用にある。ついては,今年度に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 親による乳幼児期レアシンドロームの理解と向い合いのプロセス2012

    • 著者名/発表者名
      堤俊彦,加藤美朗
    • 学会等名
      第14回日本子ども健康科学会 -子どもの心・体と環境を考える会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学
    • 年月日
      20121201-20121202
  • [学会発表] 親による乳幼児期レアシンドローム児の理解と向い合いのプロセス2012

    • 著者名/発表者名
      堤俊彦,加藤美朗
    • 学会等名
      中国四国心理学会第68回大会
    • 発表場所
      福山大学
    • 年月日
      20121110-20121111

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公開日: 2014-07-24  

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