本研究は,希少・難治性疾患児を持つ親・家族の経験する実態理解を進めることを目的に,養育の過程で母親が経験している困難及びその対応について聞き取りを行った。対象者を,乳幼児から就学期までのプラダウイリ-症候群児を持つ母親に絞り,出生から就学前の期間において直面する困難や適応について,グループインタビューを行った。調査に同意した家族の中から,4歳から7歳までのPWS児を持つ親を選び,フォーカスグループインタビュー(以下,FGIとする)を実施した。FGIのデータを分析し,PWS児の養育に伴う親が経験する出来事をカテゴリーに分けると,「出産前後の不安と困惑」,「予測していた子育てとの解離」,「障害受容と子育ての再考」,「子どもへの関わり方の理解」の4つのプロセスが明らかになった。「出産前後の不安と困惑」とは,出産後に子どもの様子が変であったり,他の新生児と異なっているなど,明らかに異常が認められるにもかかわらず,医師は明確な診断名をつけない状況をいう。「予測していた子育てとの解離」は,望まれて生まれてきた待望の子どもであり,自分の思い描いていた子育てと,障害ゆえの現実とのギャップにおける苦悩である。「障害受容と子育ての再考」は,一般的な子育てのイメージから離れ,自分なりの子育てについて考え直すことであり,「子どもへの関わり方の理解」は,母親が子どもの反応に伴う気持ちがわかり,子どもとの関わりの中で子どもの特徴にあった対応を見いだしていくことである。本研究の結果,PWSに例をみる希少・難治性疾児を持つ親や家族は,地域において専門的な支援もなく孤立していることもケースも多い現実が明らかになった。そのため,地域において専門的・包括的な支援システムの構築は急務な課題である現状が明らかになった。今後は,介入実践とその効果のエビデンスを検討する研究や実践が必要となる。
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