研究課題/領域番号 |
23530943
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
西村 喜文 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40341549)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 箱庭療法 / コラージュ療法 |
研究概要 |
近年、児童養護施設において虐待を理由に入所するケースの割合が増加する傾向にあり、被虐待児への心理的支援の重要性が指摘されている。その中で、被虐待児童に対して2000年より箱庭療法が導入され被虐待児に対する適切な心理的支援が試みられている。森谷(1988)は、無口で話も十分にできない、また、絵なども苦手で、箱庭の設備もないような環境でも適用できる方法としてコラージュ療法を提案した。この方法は、雑誌やパンフレットなどを切り抜いて台紙に貼るだけの簡単な方法である。とくに、被虐待児は自分の心の中に刻まれた記憶をうまく表現することができないことが多いとされ、箱庭療法やコラージュ療法の導入は、虐待された子どもの自己表現を助け、よりよい生活を送るための一助となると思われる。すなわち、箱庭療法やコラージュ療法は、被虐待児の内面の理解に役立ち、心理的支援にも影響を与えると思われる。 本研究は、児童養護施設での箱庭技法、コラージュ技法を用いた調査研究を基礎としている。対象は、児童養護施設に入所中の被虐待児150名を予定している。具体的には、150名一人一人の箱庭作品、コラージュ作品を収集し、虐待タイプ(身体的虐待、ネグレクトなど)、形態タイプ(入所年齢、入所期間など)による箱庭表現、コラージュ表現の臨床的特徴を明らかにする予定である。また、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品の特徴から被虐待児への箱庭療法、コラージュ療法の有効性について検証する予定である。 以上のように、本研究の目的は、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品による臨床的特徴を明らかにし、箱庭技法やコラージュ技法が児童養護施設において治療的効果があることや心の傷をいやし心の成長を促進させる予防的意義もあることを明らかにしていくことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究経過として、A・B・C県内にある児童養護施設入所児童生徒100名の箱庭作品、コラージュ作品を収集した。実施に当たっては、児童養護施設長に研究目的などを説明する文章を提示し研究への協力を依頼し了解を得た。さらに実施する際は、子ども達に事前に説明し行い協力をお願いした。また、各養護施設において、心理担当者、施設関係者に事前に箱庭療法、コラージュ療法について説明を行い理解を得た。子ども達とは、事前にふれあう時間をとり、コミュニケーションを深める意味からもコラージュ制作から実施した。 以上のように、研究を推進するためには関係者への理解を得るために時間を要した。そういう中、100名の作品について収集できたことは研究が順調に進展しているととらえられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に収集した箱庭作品、コラージュ作品を第3者からの印象内容の特徴を明らかにし、箱庭療法とコラージュ療法の効果の違いについて検討する。また、箱庭作品、コラージュ作品の追加収集も行う予定である。第3者による箱庭印象分析、コラージュ作品の印象評定分析を箱庭療法、コラージュ療法の実践経験のある3名に全作品を対象として評定を行ってもらう予定である。 本研究の結果の処理方法としては、箱庭、コラージュ作品のサンプル数が多いためパーソナルコンピューターを使用する。作品のローデータを入力し、基礎データを作成する。その後、統計ソフトによる検定を行う。印象評定に関しては、作品をデジタルカメラに保存しプロジェクターを通して第3者による評定を行う。(パソコン機器等の物品)以上の分析から被虐待児の箱庭、コラージュ表現の特徴を明らかにし被虐待児を理解するためのアセスメントとしての有効性について考察したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、児童養護施設入所中の150名を対象とする膨大な箱庭作品、コラージュ作品(全300作品)を収集し、量的、質的分析しデータの蓄積を行うものである。そのため、箱庭制作、コラージュ制作のための膨大な材料(箱庭用具一式、雑誌、画用紙、はさみ等)も準備する必要がある。また、作品の保存や整理にはパソコン等の機器(パソコン、デジタルカメラ、液晶プロジェクター、印刷機器等)が不可欠である。また、膨大な数の箱庭、コラージュ作成のために補助的協力者も必要であり人件費等も準備する必要がある。
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