研究課題/領域番号 |
23530943
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
西村 喜文 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40341549)
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キーワード | 臨床心理学 / 箱庭療法 / コラージュ療法 |
研究概要 |
近年、児童養護施設において、虐待を理由に入所するケースの割合が増加する傾向にあり、被虐待児への心理的支援の重要性が指摘されている。その中で、被虐待児に対して、2000年より箱庭療法が導入され、被虐待児に対する適切な心理的支援が試みられている。森谷(1988)は、無口で話も十分にできず、また絵なども苦手で自己表現ができない人たちや箱庭の設備もないような環境でも適用できる方法として、コラージュ慮法を提案した。この方法は、雑誌やパンフレットなどを切り抜いて台紙に貼るだけの簡単な方法である。とくに、被虐待児は自分の心の中に刻み込まれた記憶をうまく表現することができないことが多いとされ、箱庭療法やコラージュ療法の導入は、虐待された子どもの自己表現を助け、よりよい生活を送るための一助になると思われる。すなわち、箱庭療法やコラージュ療法は、被虐待児の内面の理解に役立ち、心理的支援にも影響を与えると思われる。 本研究は、児童養護施設での箱庭技法、コラージュ技法を用いた調査研究を基礎としている。対象は、児童養護施設に入所中の被虐待児150名を予定している。具体的には、150名一人一人の箱庭作品、コラージュ作品を収集し、虐待タイプ(身体的虐待、ネグレクトなど)、形態タイプ(入所年齢、在園年数など)による箱庭表現、コラージュ表現の臨床的特徴を明らかにする予定である。また、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品の特徴から被虐待児への箱庭療法、コラージュ療法の有効性についても検討する予定である。 以上のように、本研究の目的は、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品による臨床的特徴を明らかにし、箱庭技法やコラージュ技法が児童養護施設において治療的効果があることや心の傷をいやし、心の成長を促進させる予防的意義もあることを明らかにしていくことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究経過として、23年度はA・B・C県内にある児童養護施設入所児童生徒の100名の箱庭作品、コラージュ作品を収集したが、今年度は25名の児童生徒の箱庭作品、コラージュ作の収集を行った。さらに、今年度は、作品収集とともに、児童生徒の入所に至るまでの経過の確認を職員の理解と協力を得て調査した。実施にあたっては、児童養護施設長に研究目的などを説明する文章を提示し研究への協力を依頼し了解を得た。さらに実施する際は、子どもたちに事前に説明し協力をお願いした。また、各養護施設において、、心理担当者、施設関係者に事前に箱庭療法、コラージュ療法について説明を行い理解を得るようにした。子どもたちとは、事前に触れ合う時間をとり、コミュニケーションを深める意味からもコラージュ制作から実施した。 以上のように今年度は、作品の収集と、入所経路について具体的に確認する時間を多く取った。そのため、関係者への理解を得るための時間も必要であった。そういう中、作品の収集と被虐待児の入所経路を確認する作業ができたことは研究が順調に進展しているととらえられる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に収集した箱庭作品、コラージュ作品と被虐待児の入所に至るまでの経過を踏まえて基礎データを作成する予定である。これを基に、箱庭作品、コラージュ作品の特徴を各形態別(年齢、入所年齢、在園年数など)に形式、内容別特徴で分析し特徴を明らかにする予定である。さらに、箱庭作品、コラージュ作品の印象について第3者による箱庭印象分析、コラージュ印象分析を行う予定である。評定は箱庭療法、コラージュ療法の実践経験のある臨床心理士に行ってもらう予定である。 本研究の結果の処理方法としては、箱庭、コラージュ作品のサンプル数が多いためパーソナルコンピューターを使用する。作品のローデータ、基礎データを作成する。その後統計ソフトを用いて検定を行う。印象評定に関しては、作品をデジタルカメラに保存しプロジェクターを通して第3者による評定を行う。(パソコン、カメラ等の物品) 以上の分析から、、被虐待児の箱庭表現、コラージュ表現の特徴を明らかにし、被虐待児を理解するためのアセスメントとしての有効性について、23年度のデータに作品を追加して考察したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、児童養護施設入所中の児童生徒150名の膨大な箱庭作品、コラージュ作品(全300作品)を収集し、量的、質的分析しデータの蓄積を行うものである。今年度が研究の集大成のときでもあり、収集のための材料(雑誌、画用紙等)の必要がある。また、膨大な作品の保(写真保存)存や整理には、パソコン等の機器(パソコン、デジタルカメラ、プロジェクター、印刷機器等)が不可欠である。 また、膨大な数の箱庭、コラージュ作成のための補助的協力者や箱庭作品、コラージュ作品の整理のための補助的協力者も必要であり人件費も準備する必要がある。
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