近年、児童養護施設において、虐待を理由に入所するケースの割合が増加する傾向にあり、被虐待児への心理的支援の重要性が指摘されている。その中で、被虐待児に対して、2000年より箱庭療法が導入され、被虐待児に対する適切な心理的支援が試みられている。森谷(1988)は、無口で話も十分にできず、また絵なども苦手で自己表現ができない人たちや箱庭の設備もないような環境でも適用できる方法として、コラージュ慮法を提案した。この方法は、雑誌やパンフレットなどを切り抜いて台紙に貼るだけの簡単な方法である。とくに、被虐待児は自分の心の中に刻み込まれた記憶をうまく表現することができないことが多いとされ、箱庭療法やコラージュ療法の導入は、虐待された子どもの自己表現を助け、よりよい生活を送るための一助になると思われる。すなわち、箱庭療法やコラージュ療法は、被虐待児の内面の理解に役立ち、心理的支援にも影響を与えると思われる。 本研究は、児童養護施設での箱庭技法、コラージュ技法を用いた調査研究を基礎としている。対象は、児童養護施設に入所中の被虐待児120名を予定している。具体的には、120名一人一人の箱庭作品、コラージュ作品を収集し、虐待タイプ(身体的虐待、ネグレクトなど)、形態タイプ(入所年齢、在園年数など)による箱庭表現、コラージュ表現の臨床的特徴を明らかにする予定である。また、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品の特徴から被虐待児への箱庭療法、コラージュ療法の有効性についても検討する予定である。 以上のように、本研究の目的は、被虐待児の箱庭作品、コラージュ作品による臨床的特徴を明らかにし、箱庭技法やコラージュ技法が児童養護施設において治療的効果があることや心の傷をいやし、心の成長を促進させる予防的意義もあることを明らかにしていくことである。
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