研究課題/領域番号 |
23530945
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研究機関 | 鹿児島純心女子大学 |
研究代表者 |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 教授 (70352474)
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研究分担者 |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (40024004)
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キーワード | 性被害 / PTSD / 臨床心理査定 / 臨床心理面接 / 心理教育 / ロールシャッハ・テスト / 裁判員裁判 / コンサルテーション |
研究概要 |
性被害によってPTSD(外傷後ストレス障害)を被った被害者への、適切な臨床心理査定、臨床心理面接のありようについて、事例を通して明らかにし、同時に裁判員裁判のありよう、適切な支援システムの構築を試みることを目的に、研究をすすめている。 平成24年度は、27事例の性被害者、家族、支援者の臨床心理査定、臨床心理面接、心理教育を実施した。臨床心理査定の結果から、全事例にPTSD症状が認められた。家族の代理受傷(PTSD)も明らかになった。 中でも、「致傷罪」という罪が加わることで、裁判員裁判にならないように、告訴を取り下げる被害者もいた。また、加害者が否認することで、裁判が難航し、臨床心理学・大学教授という立場から、意見書を提出する事例もあった。また、国選被害者参加弁護士による、意見陳述を希望した事例では、担当弁護士や、検察官より、被害者への面接の際に留意すべき点などコンサルテーションをもとめられることもあった。 裁判員裁判に関するアンケート調査のための情報収集、事例収集、予備面接調査を実施することができ、来年度のアンケート調査の手がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度(14事例)からの継続ケースに加え、平成24年度は前年度の約2倍の性被害の事例(27事例)に対し、臨床心理査定、臨床心理面接、心理教育を実施することができた。 その結果、また、弁護士や、犯罪被害者支援センターとの連携により、裁判員裁判になることを恐れ、告訴を取り下げる例がみられることが明らかとなった。 裁判員裁判に関するアンケート調査を実施することはできなかったが、それにむけての予備調査をすることができた。 以上の理由から、おおむね、順調に進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も継続して、性被害者への臨床心理査定、臨床心理面接の事例の蓄積とその症状の経過、回復力(レジリエンス、外傷後成長など)に寄与する要因について、半構造化面接、ロールシャッハ・テスト、臨床心理面接の逐語録等について分析し、明らかにする。 また、裁判員裁判の傍聴や、それに関するアンケート調査を実施し、統計ソフトを用いて分析する。その結果や、これまでの研究成果に基づき、欧州における陪審員制度、参審制度の実際、被害者支援のありよう等について、視察、情報交流、大学等での学術交流をしていく予定である。 さらに、研究結果をもとに、正確な臨床心理査定と回復力を促進する臨床心理面接のありよう、裁判等において配慮すべき点など、事例に共通する点を見出し、ガイドラインを作成、印刷し、関係者、関係機関等に配付し、支援システムの構築を試みる。 得られた結果の成果を発表していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
アンケート調査に必要な調査用紙の印刷、統計ソフト購入、データ入力・分析のための人件費等。 欧州の大学や被害者支援団体の視察、情報交流、学術交流のための宿泊・交通費、通訳料、謝金等に支出する。また、欧州の現状把握のために、デジタルビデオカメラ等の購入も予定している。 さらに、ガイドライン作成のための印刷費、通信費、学会発表のための交通費等に使用する予定である。
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