研究課題/領域番号 |
23530949
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高野 陽太郎 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20197122)
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研究分担者 |
森島 泰則 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20365521)
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キーワード | 外国語副作用 / 言語 / 思考 / 第二言語学習 / 注意 |
研究概要 |
被験者が思考課題と言語課題を同時に遂行する二重課題実験を3つ実施した。いずれも、言語課題を外国語で遂行した場合、母語で遂行した場合より思考課題の成績が低下すれば、外国語副作用が生じたと判断することができる。 実験1と2では、語彙アクセスの段階で外国語副作用が生じるか否かを検討した。思考課題は、知能検査で非言語性知能を測定するための図形問題、言語課題は語彙性判断課題であった。実験1では日本語を母語とする被験者を対象にして、先に行なった実験の結果が追試可能であるか否かを検討し、語彙アクセス段階で外国語副作用が生じることを再確認した。実験2では、英語を母語とする被験者20名を対象とし、やはり外国語副作用が生じるという結果を得た。 実験3では、3群の被験者(英語が母語、日本語が母語、フランス語が母語)を対象として、思考課題としては計算課題、言語課題としては英語テキストの聴解課題を行う二重課題実験を実施した。英語テキストには、高難易度と低難易度の2種類を用いた。英語を母語とする被験者の場合には、思考課題の成績は、言語課題が高難易度の条件において、低難易度の条件より低下した。一方、英語を外国語とする被験者の場合には、言語課題の難易度は思考課題の成績に影響しなかった。 実験4は二重課題実験ではなく、英語読解実験であった。日本語を母語とする英語学習者25名を被験者となり、1文ずつ提示される英文を読みながら、途中で提示されるテスト文が読解中の英文と意味的に整合するか否かを判断した。意味的に関連する文の直後に提示されたテスト文に比べて、2文後に提示されたテスト文では、判断時間が長くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
語義アクセスの段階で外国語副作用が生じるか否かという問題については、最初の実験結果が追試可能であることを確認し、更に、英語の母語話者についても、同様の実験結果を得た。統語解析の段階で外国語副作用が生じるか否かという問題についても、肯定的な結果が得られた。 以上は二重課題実験の結果であるが、これらの実験においては、思考課題と言語課題の内容に全く関連がない。日常的な言語使用場面においては、言語入力と思考内容との間に密接な関連がある。英文読解課題では、日常的な言語使用場面と同様、言語入力と思考内容との間に密接な関連がある。この課題においても、外国語を使用している場合には、母語を使用している場合に比べて、矛盾の検出、および、内容の一致判断の成績が低下することが示された。
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今後の研究の推進方策 |
外国語副作用が生じる言語処理段階を特定するための実験では、統語解析の段階で外国語副作用が生じることを示した実験において、言語課題の材料が適切であったかとうかに、やや疑問が残っている。言語課題の材料を新たに作成し直して、実験を行う必要がある。 英文テキストの聴解課題と計算課題の二重課題実験においては、認知負荷を高めた場合にどのような結果が得られるかを調べるために、図形を記憶させるという課題を加えた三重課題実験を行う。 英語読解実験においては、外国語の読解と母語の読解を比較した実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
いずれの実験においても、実験材料を新たに作成しなければならない。英語の実験材料を作成、校閲、録音のために、英語の母語話者に謝金を支払う必要がある。また、被験者にも謝金を支払う必要がある。次年度は、これらの謝金が主な支出になると考えられる。
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