研究課題/領域番号 |
23530951
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | モリヌー問題 / 空間知覚 |
研究概要 |
本研究は、実験心理学における空間知覚研究の諸問題の歴史をたどり、17・18世紀の哲学者(イギリス経験主義哲学・フランス啓蒙主義哲学)が措定し検討した問題に19・20・21世紀の実験心理学者がどう答えた(あるいは答えている)のかを明確にすることを目的とする。とくに、「モリヌー問題」と「倒立網膜像問題」について、実験心理学者がそれらの哲学的考察を受けて、どのように実験を組み立て、論証を進めた(あるいは進めている)のかを、最新の歴史資料と最新の実験心理学的知見をもとに明らかにする。 平成23年度は、「モリヌー問題」に関して、ウィリアム・モリヌー、ジョン・ロック、ジョージ・バークリーの資料について調査を行なった。モリヌーの『新屈折光学』(1690年刊)は、ダブリンのトリニティ・カレッジに所蔵されているのみだが、今回の調査で、これがモリヌーの寄贈本であり、モリヌー問題そのものへの言及はないことを確認した。『新屈折光学』は294ページにおよび、図を多用しながら、記述も詳細かつ厳密であった。これまでモリヌーについてはダブリン在住の一介の弁護士がロックにあてて書簡を出し、それをロックが自著のなかで取り上げたという紹介がなされることが多かったが、モリヌーは光学の専門家であり、ロックもそのように遇していたことがうかがえた。 また、今回の調査では、モリヌーとロックの間には、63通の書簡が交わされていたこと、バークリーが同郷・同窓であったジョナサン・スウィフトと懇意であったことも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、モリヌー、ロック、バークリーの調査を行ない、「モリヌー問題」そのものが提起された経緯を明らかにすることができた。開眼手術者の術後の空間知覚の問題を詳述したディドロについても資料調査を予定していたが、日程の調整がつかず調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
開眼手術者の術後の空間知覚の問題を詳述したディドロ、および開眼手術者の術後の空間知覚についての事例をまとめたゼンデンについて資料調査を行なう。また、ストラットンについても、「倒立網膜像問題」を解くために逆さめがねの実験を行なうことになった経緯について調査を行なう。最終的には(25年度)、以上の調査結果をもとに、「モリヌー問題」と「倒立網膜像問題」について、哲学者たちによるさまざまな考察を受けて、心理学者がどのように実験を組み立て、論証を進めたのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、倒立網膜像問題と開眼手術者の術後の空間知覚の問題について、ストラットンとゼンデンの調査(ライプツィヒ大学、キール大学等)を行なう予定である。また、23年度未使用分の研究費を使用して、23年度に調査を実施できなかったディドロの資料調査(フランス国立図書館等)も行なう。
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