本研究の当初の目的は拡張ScanMatchアルゴリズムによる分析ツールの作成とアルゴリズムの検証であった。しかし、拡張ScanMatch分析ツールを含む総合的な眼球運動計測・分析アプリケーションであるGazeParserを昨年度に公表した結果、その機能に関する研究者からの問い合わせや機能拡張およびバグ修正の要望が寄せられ、本年度はその対応に研究時間の大部分を費やすこととなった。その結果、GazeParserは刺激呈示およびデータ解析を行うライブラリであるGazeParserと、GazeParserと連携して眼球運動を計測するアプリケーションであるSimpleGazeTrackerに分割された。また、心理学実験に用いられる主要なライブラリの一つであるPsychToolboxとSimpleGazeTrackerを連携させるためのsgttoolboxというライブラリの開発に着手し、公開した。これらの作業と並行して拡張ScanMatchアルゴリズムの検証実験についてもデータ分析を進めたが、今回の実験計画で使用した交通場面における危険予測課題は計画時の予想より実験参加者間の視線運動軌跡の個人差が小さく、拡張ScanMatchアルゴリズムによる分析は適切ではないという結論に至った。このような個人差が小さい軌跡に拡張ScanMatchアルゴリズムを適用するためには、個人差が大きい部分を抽出するなどの前処理が必要であると思われる。
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