研究課題/領域番号 |
23530959
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川辺 光一 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (30336797)
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キーワード | 作業記憶 / sensorimotor gating / NMDA受容体 / グルタミン酸 / 認知障害 / 統合失調症 / 動物モデル / ラット |
研究概要 |
今年度は、成体ラットにストレスホルモンであるコルチコステロン(CORT)を慢性投与し、この処置の認知機能に対する効果を調べた。この実験は、後に行う予定である新生仔期NMDA受容体拮抗薬反復投与ラットに投与するCORTの用量を決定するために行われた。ラットにCORT(30もしくは60mg/kg)、または溶媒を20日間(週5日×4週間)にわたり皮下投与し、投与終了の翌日より、sensorimotor gatingの指標であるprepulse inhibition (PPI)、作業記憶の指標である自発的交替反応、オープンフィールド内での一般活動性を測定した。また、投与終了の1週間後に再度これらの行動テストを行った。 PPIテストの結果、投与終了直後において溶媒群、CORT 60mg/kg群のPPI値がCORT 30mg/kg群よりも有意に低くなった。また、パルス試行における驚愕反応は、CORT 60mg/kg群が投与終了直後においては他の2群よりも、投与終了1週間後においては溶媒群よりも有意に低かった。自発的交替反応においては、総選択数において、薬物投与終了直後のCORT 30、60mg/kg群が溶媒群より、また投与終了1週間後のCORT 30mg/kg群が他の2群より有意に低い値を示したが、作業記憶の指標となる自発的交替率については有意差は認められなかった。一般活動性については薬物条件間に有意差は認められなかった。本研究で得られたPPIの結果は、CORTの投与によってPPI値の低下が起こるという予想とは逆の結果であったが、先行研究から予測される値よりもPPI値が著しく低い個体が溶媒群において何匹か見られたため、個体数を増やして再検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はコルチコステロン慢性投与の認知機能に対する効果を調べたが、装置のトラブルにより十分な個体数を用いて実験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の問題点として、装置のトラブルにより十分な個体数を用いて実験を行うことが出来なかったこと、溶媒群においてPPI値が著しく低い個体が見られたことが挙げられる。次年度はこれらの影響を除くため、個体数を増やしてコルチコステロン慢性投与の効果についての再検討を行う。さらに、成体ラットに強制水泳による慢性ストレスを与え、その認知機能に対する効果を調べる予定である。ここでは、1日15分間の強制水泳を10もしくは20日間(週5日×2もしくは4週間)繰り返した後に、PPI、自発的交替反応、一般活動性を測定し、これらの行動指標に対するストレス負荷の効果を調べる。 上記の実験終了後に、統合失調症動物モデルである新生仔期NMDA拮抗薬反復投与ラットに対し、コルチコステロン慢性投与もしくは強制水泳による慢性ストレス負荷を行い、このラットの認知機能に対する効果を調べる。NMDA受容体拮抗薬にはMK-801 (0.2mg/kg)を用い、7~20日齢時において1日2回皮下投与する。このラットが成育した後、コルチコステロン慢性投与、慢性ストレス負荷を加え、これらの処置の効果を調べる。この用量のMK-801処置のみによる行動変化は小さいが、MK-801処置を行ったラットはコルチコステロン慢性投与や慢性ストレス負荷による行動変化が統制群よりも大きくなることが期待される。このような結果が得られた場合、新生仔期NMDA拮抗薬反復投与ラットはストレスホルモンやストレスに対して脆弱であるということが示唆される。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、主にラット、薬品類、およびストレス負荷のための強制水泳装置の購入に充てる。
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