研究課題/領域番号 |
23530965
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
東山 篤規 立命館大学, 文学部, 教授 (00118001)
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研究分担者 |
下野 孝一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70202116)
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キーワード | 奥行き / 頭部の方向 / 図形の方向 / 面の傾き |
研究概要 |
1)昨年に行った実験から,陰影のある図形は,頭部の方向が奥行きの知覚に影響することがわかったので,今年度は,この現象の発現条件を確定するために,頭部を正立させたとき,天井の方向を見たとき,足元の方を見たときのそれぞれにおいて,陰影図形を与た.用いた図形は「球」「蛤」「鶴」であり,各図形には陰影が施されていた.各図形を0度から180度までの7段階に回転して,HMD(Head Mounted Display)の中に提示した.22人の観察者は,各頭部位置において,この21図形の奥行き感(突き出した図形か,窪んだ図形か)の判断を行った.図形と方向の各組み合わせはランダムに5回提示された. 実験の結果,頭の方向の効果は,「蛤」図形を頭を上に向けて観察したときに「突き出して」見える傾向が得られたが,「球」と「鶴」図形では,そのような頭の方向の有意な効果は得られず,3つの頭の方向の間には有意な差が認められなかった.このことは,特定の図形にのみ頭の方向の効果が現れたことを意味する. 2)昨年に行った実験から,円あるいは方形からなるきめの勾配のある図形は,頭部の方向によって,その奥行きの知覚が変わることはなかったが,図形自体の方向によって奥行きの知覚に大きな影響が得られた.すなわちきめの勾配によってつくられた面が床パターンとして見えたときは,天井パターンや側壁パターンとして見えたときに比べて,奥行き感がいちじるしく縮んだのである.このことを今年度はさらに追及するために,運動視差を用いてきめの勾配をつくり,昨年と同様の実験を行った.その結果,きめの勾配を持つパタンが床として見えたときには,奥行きが縮まり,これは昨年に行った静止パターンと同じ結果を示したといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題は,身体(とくに頭)の方向と奥行き(あるいは面の傾斜)知覚の関係を明らかにすることを目的としている.すでに過年度までに,さまざまな種類の距離の手がかり(両眼像差,運動視差,線遠近,反転図形)を含む図形を,頭部をさまざまに傾斜させて観察させたところ,陰影のある図形が,もっとも頭部の方向の影響を受けることが判明し,きめの勾配を含む図形は,頭部の方向の影響を受けないが,図形自体の方向の影響を受けることが明らかとなった.これら一連の実験によって,上述のごとく,頭部の方向によって影響される距離の手がかりが特定されたと考えられるからである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,本申請課題の最後の年度になるので,これまで行った実験を補充して,いっそう強固な結論が得られるべく試みるつもりである.それと同時に,この4年間で得られた成果を論文等にまとめる努力をはらう予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者が,平成25年度の10月から3月までアメリカに滞在して研究をしていたことがあって国内における実験のスピードを若干落とさざるを得なくなり,凸面鏡を用いた装置の作成が遅れ,その装置を用いた実験が今年度に持ち越された.装置の製作に要した経費と実験の遂行に関わる経費(実験者と被験者の雇用)を繰越した. ヨーロッパ視覚学会(セルビア,サラエボ)出張発表経費---40万円, 国内学会出張発表経費---10万円,凸面鏡装置の作成---10万円,被験者の謝金---20万円,実験者の謝金---20万円,洋書---2.5万円,材料費---2.5万円.
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