研究課題
頭の位置の変化にともなう自己受容覚の変動が,どのように奥行きの視知覚に影響するのかを明らかにした。とくに,個別の手がかりの奥行きと自己受容覚の関係を明らかにした.検討する手がかりとして両眼網膜像差,運動視差,きめの勾配,陰影を用いた.実験では被験者にヘッド・マウンティッド・ディスプレイHMDを装着させることによって目に与えられる網膜像を一定にし,頭を上方,前方,下方に傾けて画像を観察した.①両眼網膜像差の実験では,像差が9段階にわたって変化するステレオグラムを作成し,それをHMDの中に提示して,観察者は,上述した位置に頭を定めステレオグラムを融合させ,そのときに知覚された奥行きを巻尺の大きさで再生した.②運動視差の実験では,画面上部から下部にかけてドットの移動速度が線形的に高速になる7勾配刺激を提示し,観察者はそれを上述した頭の位置で観察し,その傾きを視覚勾配尺度を用いて判断した.③きめの勾配の実験では,きめの勾配が強く作用している7図形を選抜し,観察者には,上で述べた同じ3姿勢のもとで,各図形の正立画と倒立画を観察させて,傾きを視覚勾配尺度を用いて判断した.④陰影の実験では,刺激図形を180度回転させると奥行きの関係が逆転するような5図形(菓子型の写真など)を準備し,観察者は,並置された正立図形と180度回転図形を単眼観察した.観察者は,上で述べた3姿勢のをとり,凸として現れた刺激を選択した.研究の結果,両眼網膜像差と運動視差は,頭の位置の影響を受けず奥行きをつくりだした.きめの勾配は,刺激図形の正立・逆転に依存して奥行きの関係が変わったが,頭の位置の影響は受けなかった.陰影図形は,刺激図形の正立・逆転に依存して奥行きが変化したが,頭の位置によっても奥行きが変化した.陰影図形は,頭を上を向けて観察したときに凸として現れやすかった.
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立命館文学
巻: 641号 ページ: 32-43
Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 77 ページ: 681-691
10.3758/s13414-014-0774-4