研究課題/領域番号 |
23530967
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 玲子(柴玲子) 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (90291921)
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研究分担者 |
古川 聖 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (40323761)
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キーワード | 音楽階層構造 / 認知モデル / 行動解析 / 脳波計測 / 終止形 / 終止度 / 期待 / 前頭 |
研究概要 |
申請者は、昨年度までに、音楽階層構造モデル構築のため、心理学的手法を用いた計測と分析を行った。具体的には、聴取者に連続する機能和声に埋め込まれた終止形認識課題を呈示し、それぞれの終止形の構造と心理的終止感の相関を分析し終止度の数値化を行った。その結果、終止形構造に基づき、心理学的な終止度の強さに違いがあることが示された。 本年度の研究計画は、音楽階層構造モデルの行動実験による検証、及びその脳波計測による検証である。 まず昨年度までの結果をもとに、終止構造をより詳細な構造に分類し、終止構造カテゴリーと引き起こされる終止度との関係の分析を行った。その結果、終止構造を構成する楽音のうち、音高が最も高い楽音と音高が最も低い楽音、および機能和声による和音の分類が終止度に影響を与えていることが分かった。より強い終止度をもつ終止形により、音楽情報はよりはっきりと分節化され、その結果、より大きな音楽のまとまりを形成すると考えられる。現在、さらに行動実験を繰り返し、モデルの単純化を行っている。 また、上記の結果に基づき、強さの異なる終止度をもつ終止構造を組み合わせた楽曲を作成し、音楽のまとまりを認識する際の脳波計測と分析を行った。その結果、大きなまとまりを形成する強い終止度をもつ終止形認識時には、終止構造の最終和音呈示前に、次の和音を期待する陽性の脳活動を前頭部に表出することが明らかとなった。また、はっきりとしたまとまりを形成しにくい弱い終止度を持つ終止形認識時には、期待の脳活動は表出せず、終止構造認識時に前頭から頭頂部に陽性の脳活動を表出した。 脳機能解析の結果は、平成24年度日本音楽知覚認知学会秋期研究発表会および平成24年度日本認知科学会でそれぞれ口頭発表を行った。また平成25年度日本神経科学大会で口頭発表予定である。さらに、論文投稿を行い、査読の結果を待っている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」は、音楽構造の階層化モデルを構築し、ヒト認知に基づいた音楽階層構造を体系化することである。音楽の表現力および情報伝達力を調べるためには、その構造自体を体系的に分析するモデルの構築が非常に重要である。そこで本研究では、西洋調性音楽の統語構造に着目した。言語の句構造文法のひとつである文脈自由文法(context free grammar: CFG)に音楽の機能和声の終止度を導入することにより、新しい音楽構造の階層化モデルの構築を提案している。 本年度の研究で記載した内容は、音楽階層構造モデルの行動実験及び脳波計測による検証を行うことである。申請者は、申請書に記載した計画通り、昨年年度の心理学的分析結果をもとに、音楽階層構造モデルの原型に具体的な終止構造を組み入れたモデルの構築を行った。その結果、終止構造を構成する楽音のうち、音高が最も高い楽音と音高が最も低い楽音、および機能和声による和音の分類が終止度に影響を与えていることが分かった。より強い終止度をもつ終止形により、音楽情報はよりはっきりと分節化され、その結果、より大きな音楽のまとまりを形成すると考えられる。現在、さらに行動実験を繰り返し、モデルの単純化を行っている。 また、さらに申請書に記載した通り、行動実験と平行して脳波計測によるモデルの検証を行った。このモデルによる階層構造と被験者の階層構造認識による脳活動との関係を明らかにした。さらに行動実験および脳機能計測を繰り返すことによりモデルの修正を行っているところであり、申請の研究計画に合致している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画の推進方策は、現在進めている音楽階層構造モデルの行動実験および脳波計測による生理学的検証と修正を終わらせ、音楽階層構造モデルの構築を完了させることである。そのために、これまで行ってきた方法を繰り返し行い、モデルの修正を完了する。さらにその成果の学会発表および論文発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の通り、行動実験および脳波計測による音楽階層構造モデルの構築の完了およびその成果の発表を目指す。計測と分析の主な部分は、これまでの年度で購入した機器で実施することが可能である。研究計画に記載した通り、次年度の研究費の使用計画は、被験者への謝金、計測と分析に必要な消耗品、および成果発表のための経費である。
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